プロが脱帽。オリックス金子千尋はココが凄い!

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 そして西武の栗山巧は「真っすぐ、変化球ともに一級品。さらに、けん制、フィールディングなど、投手として必要なものをすべて兼ね備えている。僕の中ではナンバーワンのピッチャーです」と語った。それから、対戦したからこそ知る、金子のピッチングの醍醐味について楽しそうに話してくれた。

「金子くんの何がすごいって、たとえば、カウント2-0という打者有利のカウントでツーシームやカットボールをど真ん中に投げてくるんですよ。そういうのが過去に何度かあって、普通はカウントを取るのに必死なはずなのに、そう見えない。マウンドから観察されているようで、『このボールは頭になかったでしょ』っていう感じで投げてくるんです。遊ばれている感じがしますよね(笑)。すごく頭のいいピッチャーだと思います。正直、金子くんは真っすぐ、フォーク、スライダーの3種類だけで十分勝負できるんですよ。でも、カットボールやツーシーム、チェンジアップ……と投げてくる。どれもが一級品で、それを遊び球のように使ってくる。こんなピッチャーはいないですよ」

 また、栗山は金子のことを「完璧主義者」と言った。

「自分の中にピッチングの組み立てがあって、たとえば、外角にツーシームを投げるとしますよね。それで外に意識させておいて、次はインコースにカットボールを投げてくる。さっきも言いましたが、3つの球種で十分抑えられるんだけど、いろんな球種を投げて抑えたいという欲求があるんじゃないかな。きっと、自分の思い通りにやりたいんでしょうね。そういう部分ではダルビッシュに近い気がします。力でねじ伏せることもできるんだけど、頭を使いながらいろんなボールを投げたいのかなと。田中(将大)とは対照的ですよね。田中は決まった球を、きっちり投げ込んで打ち取るタイプです」

―― 金子投手と対戦する時はどんなアプローチを?

「あれこれ考えずに打席に入ります。だって、向こうはこっちの様子をうかがっているでしょ。あのクラスの投手は洞察力がすごいから、こっちの反応から考えることを見抜いてくるんです。だったら、シンプルにいった方がいいと。それに、金子くんのような大エースとの対戦は、自分の今の状態を知るのにもいいんです。打てたら調子がいいんだと。打てなかったとしても落ち込むことはない。やっぱりいいピッチャーだと思えばいいことですから」

 対戦相手から様々な意見が出たが、これを金子本人にぶつけてみた。

―― いろんな球種を自在に操り、打者は遊ばれていると感じることがあるそうです。

「遊んでいるつもりはまったくありません。いろんな球種を持っていないと不安なんです。真っすぐだけで抑えられるわけじゃないし、じゃあ真っすぐとフォークだけでいいかといえば、そうはいかないですし……。僕自身はいろんなボールを使って、やっと抑えることができると思っています」

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