後半戦のキーマン!? あの斎藤佑樹が戻ってきた

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Nikkan sports

 それにしても、よくぞ、この大舞台で思い切ったことを、と思って試合後の斎藤に聞いてみたら、彼はこう言った。

「いや、横須賀(6月24日、ファームのベイスターズ戦)で少し、遠軽の試合(7月5日、こちらもファームのライオンズ戦)でも右バッターと左バッターで踏み分けていたんですよ」

 いずれの日のピッチングも球場で見ていたのだが、グラウンドレベルにある低い位置の記者席から観ていたため、気づけなかった。札幌ドームは記者席の位置が高いため、一目瞭然だったのだ。

 ヒントはその前、宮城県利府でのピッチングにあったのだと斎藤は明かした。

 6月15日のイースタン・リーグ、イーグルスとの一戦。

 じつは、この試合の斎藤のピッチングは不可解極まりなかった。

 その前の室蘭(6月7日、ファームのベイスターズ戦)でストレートへの手応えを口にした直後の実戦だというのに、斎藤は見ているこちらが引っくり返るようなフォームで投げ始めた。それも忽然と2回から……当日のスコアブックにはこんなメモ書きが残っている。

 1回のところには『ボールに力がある、上体が乗ってきている』。

 ところが、2回の欄にはこうだ。『なんだ、この回、急にボールを置きにいくフォーム、なぜ?』

 突然、怖々と投げだしたように見えたのである。腕が振れず、上体が前へ乗っていかない。腕が振れていた1回と2回の変貌ぶりを思うに、右肩の痛みが再発したとしか思えなかった。もしそうなら、無理して投げるべきではない。

 しかし、斎藤は3回も4回もマウンドへ上がった。

 スコアブックの4回のところには『フォームが緩む、気になる』と書いてある。もし右肩が痛いのならば、ここで無理して投げる斎藤ではないはずだ。ならばこのフォームはなぜ……その答えは、やがて明らかになった。

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