セ界の好打者たちが語った「藤浪晋太郎の成長度」

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

―― 現時点での藤浪投手の評価は、グッド、ベスト、スペシャルのどれですか?

「まだまだスペシャルじゃない(笑)。グッドからベストに近づいている段階ではないでしょうか。もちろん、彼自身も今のピッチングには納得していないと思いますよ。僕が思うスペシャルな投手は、ダルビッシュ有(レンジャーズ)や田中将大(ヤンキース)。日本では、金子千尋(オリックス)、前田健太(広島)、菅野智之(巨人)がその域に達しているんじゃないですかね。今年はあまり調子がよくないですが、攝津正(ソフトバンク)もスペシャルな投手です。とはいっても、藤浪投手はまだ20歳ですよ。これから藤浪投手がどういうピッチングを目指していくのか、楽しみにしていますよ。球児みたいにフォーシームでいくのか、それとも動くボールをあえて使って、今どきのピッチャーの形をグレードアップさせていくのか」

 横浜DeNAの先発・久保康友は、昨年まで在籍していた阪神で藤浪と1年を過ごした。

「今の(藤浪)晋太郎の印象ですか? 今年対戦(4月8日)した時も、ボールの速さしか見ていなかったので、インステップまでは見ていなかったですね。練習を見ていれば気づいていたかもしれないですが……。アイツは目の前の結果をつかみにいくタイプではなく、先を見据えながら考えて練習に取り組む選手ですから。現時点での成績でいろいろと言われているようですけど、それはアイツもわかっていると思います。でも、芯がしっかりしているから、いま自分のやっていることがこの先、必ず生きてくると理解してやっているはずですよ」

―― 昨年、ルーキーながら10勝を挙げて、「今年はもっと勝つのでは」と期待してしまいます。

「基本的に、先発投手の10勝は自分の数字ではなく、人がつけてくれる数字ですからね。僕の中では、先発投手の勝利数は何の指標にもなりません。たとえば、奪三振率が上がったりとか、真っすぐを投げた時に前に飛ぶ打球が減ったりとか、それが僕の考える先発投手の数字です。アイツも勝ち星ではなく、ピッチャーとして大事なものは何か、わかっていると思います」

―― ピッチャーとして大事なものとは何ですか?

「これは立場によって違ってきます。たとえば、30歳の投手が一軍で何の数字もないとします。この場合は、自分の伸びしろよりも能力を出し切って首脳陣にアピールしなければなりません。先程の話と矛盾するかもしれませんが、この場合は目先の数字に飛びつくことが大事。でもアイツは違う。今の器の中だけでやれば、昨年と同じ成績は残せると思います。ただ、それだと経験値が増えません。今のアイツに求められているのは、自分の成長プラスチームへの貢献です。そのためには、目先の数字よりもチームの3年先、5年先を考えなければならない。苦しい時期は必ずあると思うけど、引き出しを増やしていく必要があります。実際、それを見越してやっているはずですよ」

 藤浪のことについて語る選手たちの口から「球界のためにも」という言葉が何度も聞かれた。それだけ藤浪のポテンシャルの高さを認めている証でもある。たとえば3年後、藤浪がどんな投手に成長しているのだろうか。はたして5年後には? そんな期待に思いを馳せながら、これからの藤浪のピッチングに注目していきたい。

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