セ界の好打者たちが語った「藤浪晋太郎の成長度」

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 強力ヤクルト打線の中で、目覚しい活躍を見せているのが山田哲人だ。昨年、藤浪との対戦は9打数無安打に終わっている。山田は「右打者にとってインステップは脅威」と言った。

「インステップはこっちに向かって投げてくる感じがするんです。正直、打席に立っていて怖いですよ。しかも彼の場合、抜けた球も結構あるので、それを意識しすぎるあまり、昨年は腰が引けてしまって打てませんでした」

 今年はまだ1試合しか対戦していないが、1打数1安打、2四球、1犠飛。

「昨年秋にインステップを矯正するとの情報があったので、ラッキーと思ったんですけどね。でも実際に対戦すると、相変わらずこっちに向かってくる感じがありました(笑)。ボール自体は昨年とそれほど変わってないと思います。真っすぐは速いし、変化球もキレがありました。それがいいコースに決まると手も足も出ませんが、今年はしっかり踏み込んで、甘いボールが来るまで待つという意識で打席に入っています」

 現在、セ・リーグ首位打者の大島洋平(中日)は、2年目の藤浪をこう見ている。ちなみに、昨年は3打数無安打だったが、今季はここまで10打数4安打。

「ボールは昨年とそれほど変わっていないですね。ただ、真っすぐのコントロールにバラつきがあるので、ボール球が多くなればこっちは楽に打席に立てます。ストライクをどんどん投げてくる投手の方が嫌です。今なら、ジャイアンツの菅野(智之)投手がそうですね。藤浪投手もストライクが簡単に取れるようになってくると、相当厄介な投手になってくると思います。ボールが動くことについてですか? (左打者の僕から見て)インコースに来るのはカット気味で、アウトコースはシュート気味に変化する。でも、それが"彼のピッチングの色"という感じはないですね。印象としては、背が高くて腕が長いので、他のピッチャーと比べると球離れが遅い感じがします」

 藤浪は昨年、高卒ルーキーとしてドラフト制度導入以降7人目となる10勝をマークした。これまでその記録を達成したのは、堀内恒夫(元巨人)、鈴木啓示(元近鉄)、江夏豊(元阪神など)、森安敏明(元東映)、松坂大輔(現メッツ)、田中将大(現ヤンキース)というすごい顔ぶれで、いやが上にも期待値は高くなる。そして今年も、決して期待を裏切るような成績ではない。しかし、どこか物足らない気がするのはなぜか? 中日のベテラン・和田一浩がこんな話をしてくれた。

「藤浪投手のピッチングに、昨年と大きな違いはありません。インステップを修正したとか、投手の技術的なことはわかりませんが、新しいことにチャレンジするというのは素晴らしいことですよ。個人的には、インステップがどうこうじゃないと思います。彼はまだ完成されたピッチャーじゃありません。これから完成していくピッチャーなんです。今は基本的にどこにボールを投げるのかわからないピッチャーです。アウトコースを狙って、そこに投げられるピッチャーではありません。ただ、それが彼の持ち味でもあるので、それはそれでいいと思います。結果的にボールを絞りづらくしているので......」

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