原辰徳監督が父・貢氏から受け継いだ「勝利のDNA」

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takaashi
  • 寺崎敦●取材協力 cooperation by Terasaki Atsushi photo by Nikkan sports

 そして1980年のドラフトで4球団による競合の末、巨人に入団した辰徳氏だが、"交渉権確定"のクジを引いたのが当時の藤田元司監督(故人)だった。じつは、岩井氏と藤田氏は深い関係がある。岩井氏が東海大の監督時代、ある時貢氏の家に呼ばれ、藤田氏の娘を紹介された。それが縁でふたりはのちに結婚。つまり、岩井氏にとって藤田氏は義理の父親というわけだ。

「辰徳のプロ野球での師匠は藤田のお父さんで、野球についていろいろ教えてもらっていましたよ。藤田のお父さんは打撃も重視していたけど、投手出身なだけにピッチャー目線に立った采配をします。よく辰徳に、先発や中継ぎ、抑えの役割の違い、起用法の違いを教えていました。辰徳の采配を見ていると、投手については藤田のお父さんの影響を受けているのかなと思う時がありますよね」

 そう語った岩井氏だが、「ただ攻撃に関してというか、采配はオヤジさん譲りのところがあります」と言う。

「オヤジさんの野球は10点取られたら11点取り返す超攻撃野球でした。辰徳も攻める時は徹底して攻める。親子揃って後手に回るのを嫌いました」

 たとえば、今年の6月15日、交流戦での楽天戦(コボスタ宮城)。0-1と1点ビハインドの9回、それまで楽天先発の則本昂大に1安打に抑えられてきたが、先頭の長野久義が安打で出塁すると、続く代打の高橋由伸も安打で無死一、三塁。ここで高橋の代走、鈴木尚広が盗塁を決め、無死二、三塁とし、坂本勇人のタイムリーで2点を奪い逆転に成功した場面があった。

「基本は攻撃野球です。攻める時は一気に攻める。無死一塁からバントという選択もあったと思いますが、高橋を打たせた。迷いはなかったと思いますよ」

 そして岩井氏に貢氏と辰徳氏の共通点はどんなところかと訊くと、次のような答えが返ってきた。

「勝利に対してどん欲なところですね。プロとアマの違いはあるけど、日本一しか目指していない。だからこそ、気の抜けたプレイをする選手や、気持ちの入っていない選手を見ると許せないのでしょう。そういう厳しさは辰徳も持っています」

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