復活のマウンドへ。斎藤佑樹が導き出したひとつの答え

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 実際、斎藤のストレートは、パワーのある4番・山川穂高のバットを、スイングスピードの早い5番・森友哉のバットを、押し込んでいた。

 にもかかわらず、変化球に頼る。

 しかもストライクゾーンではなく、低めに、低めに投げようとする。

 今の斎藤なら、真っすぐをストライクゾーンに投げれば勝負できるのに、ボールゾーンを振らせようという意識が、歯痒くてならなかった。ピッチングを難しくしていたのは、斎藤自身ではないか。試合後の斎藤は、こう言っていた。

「もっと大胆に行くべきでした。配球も、ピッチングも......」

 聞くまでもない。

「真っすぐを、ポンポンポンと投げればよかったのかな」

 わかっているなら、なぜ、そうしないのか。

 右肩の痛みはない。目指すフォームもできあがりつつある。何よりもストレートの質が変わってきていた。しかもそれは、今に始まった話ではなかった。今年の斎藤は、キャンプからずっとその状態を保っている。

 にもかかわらず、涼しい顔でストライクを投げられない。

 札幌ドームでもそうだった。

 4月10日のイーグルスとの試合で、斎藤は今シーズン、2試合目の先発を任された。もちろん一軍での話である。しかし2回表、この日4個目のフォアボールを出した斎藤は、「バッターと勝負しないピッチャーはあり得ない」と栗山英樹監督にマウンドを引きずり下ろされた。まだアウトを4つしか取ってないのに、この時点での斎藤は51球を費やしていた。ストライクを投げることができなかったのである。そんな斎藤を見ながら、彼がキャンプのとき、こんな話をしていたのを思い出した。

「まず、自分の中の恐怖感に勝たなければならない。それから、自分の中の盛り上がる気持ちに勝たなければならない。年末からブルペンに入って、あれだけ準備してきたのに、いざキャンプに入って、たくさんの人に見られて気持ちが高ぶると、どうしても力んで、フォームがブレちゃうんですよね」

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