DeNA山口俊、西武・十亀は、なぜ先発転向で蘇ったのか? (2ページ目)

  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 それに比べてリリーフは、1点も与えられない場面や、無死満塁の場面で投げなければいけない時があります。そういう場面でいきなり気持ちを入れていかなければなりません。先発とリリーフはまったく別物なんです。

 だから、優秀な先発投手が優秀なリリーバーになれるとは限りません。ダルビッシュ有やマー君(田中将大)もWBCではリリーフに回り、苦労しましたよね。メジャーでも昨年、シーズン21勝をマークしたデトロイト・タイガースのマックス・シャーザーがポストシーズンでリリーフ登板しましたが、思うようなピッチングができませんでした。

 もちろん、投げる本人が適性に気づいていないこともあります。「オレはリリーフでもいける」と、いざマウンドに立ってみたら、「どうも様子が違うぞ」と。先程も言いましたが、先発とリリーフではゲームへの入り方がまったく違う。リリーフはいきなりきつい展開から入るので、気持ちをコントロールすることが難しいんです。

 そういう意味では、山口は先発タイプなんです。リリーフをするには神経質すぎたように思えます。ただ、山口はストレートに力がありますし、チームに山口以上にクローザーを任せられる選手がいなかった。でも今年はルーキーの三上朋也がこのポジションに入り、結果を出したことで、シーズン途中の配置転換ができたのだと思います。

 十亀にしても、真っすぐが速くて、三振が取れるため、短いイニングでもやってくれるだろうと首脳陣は思ったはずですが、リリーフになると大胆さがなくなり、腕も振れなくなった。気持ちの部分で自分を追い込み過ぎたのでしょう。

 その点、日本ハムの武田久はリリーフ向きの投手だと思います。彼も「1点もやりたくない」と強い気持ちを持っていますが、そのために何をしなければならないのかを最悪のケースから逆算して考えることができるんです。

 たとえば、1-0の場面で、絶対にやってはいけないのがホームランを打たれることです。ホームランを打たれる可能性が高いのは変化球の抜け球ですので、徹底してアウトコース低めに集めてくる。カウントが苦しくなってもそこは徹底してきます。それに、相手打者によっては四球もOKと割り切ることができる。そのあたりの度胸はたいしたものだと思います。

 確かに、山口や十亀は真っすぐが速くて三振が取れるので、典型的なリリーフタイプに思われがちです。でも、実際にリリーフに必要なことは精神的な部分が大きい。つまり、その投手の持っているボールだけで判断するのではなく、性格もしっかり把握しなければなりません。リリーフの適性を判断するのはものすごく難しいのです。

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