栗山監督の一番の悩み「大谷は平気で泣きを入れてくる」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

―― とはいえ、今年のキャンプの時、監督は「今年、日本一になるところから逆算すると、どういうメンバーでなければならないのかはイメージできている」とおっしゃっていました。その日本一になるメンバーというのは、開幕戦で組んだオーダー(陽岱鋼、西川遥輝、大谷翔平、中田翔、ミランダ、小谷野栄一、稲葉篤紀、大引啓次、大野奨太)だったんじゃないんですか。そこから考えると、今のメンバーはかなり想定外だと言えるんじゃないかと......。

「うん、それはそうかもしれません。でも、V9のジャイアンツのように本当の力があるチームならば、メンバーが固定できて、想定した方向へそのまま行ったほうが勝ちやすいと思うんです。ところが僕らみたいに選手が育つことを期待しながら戦っていくチームというのは、逆に想定しなかったメンバーがどれだけプラスアルファをもたらしてくれるかが大事になってきます。単なる足し算ではなく、掛け算となってチームが進んでいく方が、明らかに日本一には近づく。そういう考え方からすれば、僕が最初に想定したイメージとは違う形で勝っている方が強いチームになっている可能性があります。チームというのは生き物ですから、日々、変わっていく。その状態を、間違わないよう判断していくのが僕の仕事です。今日は水をあげなきゃ、今日は太陽に当てなきゃ......そういうことを積み重ねてきた結果、今、僕が監督になったときに3年後をイメージした若い選手たちが、ようやく成長し始めている。そういう成長のプラスアルファも、ファイターズが日本一になるための条件だと思っています」

―― なるほど......ならば今、開幕前のイメージを越えて、監督をワクワクさせるような成長、変化を遂げてくれている選手といえば、誰になりますか。

「中島卓也、西川遥輝、近藤健介。この3人の内野手は、期待値からすればまだ全然行き切れてないんだけど(苦笑)、それでもワクワクさせてくれています。今、あえて内野手と言いましたけど、もちろん近藤のキャッチャーを考えてないわけじゃない。でも、近藤のサードというのは、彼の入団1年目から、外野も含めて僕はイメージしていました。だから1年目の日本シリーズから代打として使いましたし、練習では内野でノックを受けてもらったりして、ずっと準備をさせてきた。そうすると野球の神様が、ここだというピンポイントのタイミングで指示を出してくるんです。だって誰がケガをするのかなんて、野球の神様にしかわからないでしょ。(小谷野)栄一がケガして(5月1日、ライオンズ戦)、サードがあく。大引もいない(その日から、下半身の張りで3試合欠場)。そうなると、ショートに(中島)卓、サードに近藤を使おうということになる。だから、最後は僕が決めるんじゃない。野球の神様の指示に沿っているだけなんです。(西川)遥輝のセンターにしても、(陽)岱鋼がケガするなんて考えたくない。でも、遥輝のスピードを生かすには一番広いところを守ってもらうのがいいかなと思っていたので、岱鋼がケガをしたとき、センターに置いてみた。ただ、それが野球の神様が求めていた答えだとは限りません。それを、僕も感じ取らないといけない。そうやって、僕らは野球の神様に試されているんだと思います。ちゃんとイメージしているのか、ちゃんと考えているのか、ちゃんと準備しているのかって......」

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