最弱投手陣のヤクルトが後半戦の台風の目に! (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 いずれにしても、登録抹消されている投手のうち、せめてふたりでも健康であれば……また違った展開になっていたのではないだろうか。高津コーチは言う。

「もちろん、何人かが健康であれば今のスタッフとは違ってくると思います。ただ、コーチとしてそこは言ってはいけない。今いる選手たちでどう戦っていくかを考えるのが最優先ですから」

 そんな状況の中、先発では木谷良平、古野正人、ブルペンではルーキーの秋吉亮、岩橋慶侍といった若い投手が徐々に力をつけてきたことも事実だ。

「彼らは1試合ずつチャンスをモノにしていますよね。本当に成長してくれているなと感じます」(高津コーチ)

 石川も、今の状況は若い選手にとってチャンスだと言う。

「僕も若い頃は先輩の調子が悪かったり、ケガをしたりしてチャンスをもらいました。実際、若い選手たちは目の色を変えてやっていますし、投げるたびに成長しているなと感じます。今までは小川に頼りすぎていたので、彼が戻ってくるまで全員で頑張りたいという気持ちが強いですね。もちろん、小川がいちばん悔しい思いをしていることはわかっています」

 複数の主力投手を欠く中で、少しずつではあるが底上げされつつある投手陣。石川は「腕を振れるようになってきたことが大きい」と言う。

「高津コーチや伊藤(智仁)コーチから『打たれてもいいから腕を振れ』と言われ続けてきたことがようやく浸透してきたのかなと思います。打たれたら反省することも大事ですが、気持ちを切り替えることも大切。今はみんなが前向きになれています。それが、ちょっとずつ数字になって表れていると思います」

 高津コーチも投手陣の出来に手応えを感じ始めている。

「先程も話しましたが、まったく関係ないところでフォアボールを出すと高い確率で失点するんです。6月8日の西武戦でも、15安打されましたがフォアボールは2個だけ。9回に2ランを打たれましたが、5失点で収まった。フォアボールが関係ないとは言えないと思うんです。ストライクゾーンで勝負できる投手が増えましたし、歩かせてもいい時と、勝負をしなきゃいけない時のメリハリができるようになってきました。それに走者を出しても次の進塁を許さない、失点しても次の点を与えない。僕らが口やかましく言っていることが影響しているのかどうかはわかりませんが、ピッチャーが粘れるようになったのは間違いありません」

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