12球団最強。ヤクルト打線を変貌させた「秘密練習」 (5ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 とにかく狙っている球が来れば、積極的に打っていけと指示しているという。

「僕らの考える自己犠牲とは、監督からサインが出ない中で、右打ちだったり、3-0や3-1といったカウントでフォアボールを選ぶために待ったりすることです。僕がベテランの頃は、そうした自己犠牲に若い選手もすんなり対応できていましたが、今の若い選手に自己犠牲を求めても難しいと思うんですよ。そこで、監督からのサインがない時は、余計なことを考えずに思い切りスイングしようと言っています」

 もちろん、無作為にただバットを振り回すことを推奨しているわけではない。

「選手の能力、得意な球種、得意なコースなどをベンチ入りスコアラーと相談して、それを明確にした上で選手たちに『このボールが来たら、初球から打っていこう』と伝えています。逆に追い込まれたら、粘って球数を投げさせようと指示しています」

 こうしたバッティングプランは選手たちにも好評で、今シーズン、3番に定着した川端は次のように語る。

「実際、深く考え過ぎずに打った方が結果はいいですからね。僕自身、去年までは足の速いランナーが一塁にいると、『初球は待とうかな』などと考えていましたが、今年はサインが出ない限り初球からいってもいいと言われていますので、甘い球がくればどんどん打つようにしています。それがいい結果につながっていると思います」

 試合前のティーバッティング、そして試合でのバッティングプランが好調の要因であることに間違いはなさそうだ。

「選手はストレスがかかる中でプレイしているので、心のよりどころがほしいんです。これを続けているから成績がいいとか、いい球が来れば初球でも打っていいとか。そういう意味で、杉村さんの練習方法と選手の意識がうまくマッチしていると思います」(真中コーチ)

「今のプロ野球は情報戦の部分がかなりあります。その中で、ベンチが明確なデータを選手に与える。だから、打者は思い切ったスイングができるんです」(杉村コーチ)

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