もはや日本のエース。解説者7人の「金子千尋論」 (3ページ目)

  • スポルティーバ●構成 text by Sportiva
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

◎金村義明(元近鉄、中日、西武)

 ひょろっとしていて、表情も穏やかなので、一見、プロ野球選手には見えない雰囲気があるのですが、いざマウンドに上がればものすごい迫力で打者に向かってきます。このギャップの大きさが、これまでエースと呼ばれたピッチャーと一線を画しています。

 ストレートを含めたすべての球種がウイニングショットになるほど、どのボールも完成度が高く、コントロールもいい。タイプ的にはダルビッシュ有が最も近いと思います。また、ふたりに共通しているのは器用なところです。金子もダルビッシュも、自分のイメージ取りに体を動かすのがうまく、頭と体のバランスが素晴らしい。だから、あれだけ精度の高い変化球をたくさん投げられるのだと思います。

 ほんの数年前はケガも多く、頼りないイメージがあったのですが、今は誰もが認めるエースへと成長しました。金子が投げる試合は勝つ確率も高いですし、何よりリリーフ陣を休ませることができます。まさに絶対的エースと呼べる存在です。

◎山崎武司(元中日、オリックス、楽天)

 金子は肩の開きが遅く、ボールの出どころがわかりづらい。それでいて、ストレートは150キロ近くあるし、変化球も多彩。それにピッチングフォームも独特で、足を上げてからリリースするまでの時間が長く、非常にタイミングが取りづらい。これほど打ちづらいピッチャーはいません。

 打者は1試合出場すれば、大体3~4回同じ投手と対戦します。普通に考えれば、1打席よりも2打席目、2打席目よりも3打席目というように、対戦を重ねていけばいくほどデータが揃い、タイミングも合ってくるのでヒットを打つ確率は高くなるはずなんです。でも金子の場合は、全打席違う攻めをしてくるからこれに当てはまりません。こっちが変化球を狙っていると思えば、ストレート勝負してくるし、アウトコースを狙っていると思い切りインコースを突いてくる。そのあたりの臭覚は、田中将大に通じるところがあります。まさに超一流のピッチャーと言えます。

 これまでパ・リーグには、ダルビッシュ有や田中将大といったスーパーエースが存在していたため、金子に大きな注目が集まることはなかったが、そのハイレベルなピッチングは彼らに匹敵すると解説者たちは断言した。ただ、ダルビッシュや田中にあって、金子にないもの。それが“日本一”の称号だ。これを手にした時、金子は正真正銘の「球界のエース」となるであろう。

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