3年前は専門学校生。広島・一岡竜司が実現したシンデレラストーリー (3ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • photo by Nikkan sports

 試合前には巨人・原辰徳監督から「ユニホームが似合っているな。役割を守るのではなくて、上がっていかなくてはダメだぞ」と激励された。キャンプ、オープン戦と好調を維持し、初の開幕一軍とセットアッパーの座を掴んだ一岡。敵将から、さらなる飛躍を期待されていることに喜び、自信を深めた。

 球団から広島移籍の通告を受けた夜は、現実を受け止められずに涙を流した。それでも古巣への感謝は忘れない。
 
「今の僕があるのは、ドラフトで指名してくれた巨人のおかげ。活躍することが恩返しになれば嬉しい」

 一岡は大分・藤陰高校の2年秋に右ひじを疲労骨折し、3年時は一度もマウンドに上がることはなかった。大学や社会人チームから声は掛からず、社会人野球に登録している沖データコンピューター教育学院という専門学校の野球部のセレクションを受け合格。何とか野球を続けることができた。ただ、立場はあくまでも専門学校生である。生活費や遠征費は自分で負担しなければならなかったため、一岡はイタリアンレストランでアルバイトをして生計を立てていた。多くの人の支えがあって、今の自分があると一岡は言う。プロ初勝利を挙げた際、「専門学校やアルバイト先にも感謝したいです」とはにかんだ。

 そして一岡はこう胸を張る。

「(巨人を去る時は)寂しさも悔しさもありましたけど、広島が必要としてくれたことが嬉しかった。なにより野球を続けていられることが幸せです」

 広島の勝利の方程式の一員となった一岡は、ここまで(5月12日現在)16試合に登板し、1勝0敗11ホールドをマーク。そして防御率は驚異の0.00。一岡の野球人生はこれから本番を迎えようとしている。

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