打撃好調。内川聖一に「新感覚」を授けた女性アスリートは? (2ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • 繁昌良司●写真 photo by Hanjo Ryoji

 それでも内川は満足していなかった。

「チームの順位(4位)もそうですが、フル出場できたといっても約3分の1はDHでの出場でした(実際は38試合なので約4分の1)。やはり守って全部出たい。そのためには『走る』ことから見直さないといけないと思いました」

 わずか3日間のトレーニングだったが、内川は充実した日々を過ごした。

「走ることが楽になりました。人間は腕を振れと言われると、前に振ろうとするらしいのですが、後ろに引きなさいと教わりました。そうすることで体が低いまま進むことができる。そしてもうひとつは、日頃のトレーニングから体幹をしっかり固定して手足を動かすこと。この2点です」

 特に後者は、打撃での考えに大きく生きた。

「力を込めて打てば、ボールが飛ぶのは当たり前なんです。でも、そのやり方だとブレが生じてしまう。当然、確率は下がります。僕はヒットを打つことを求められていますから、それはマイナス要素。でも、ホームランは野球の華。確率を下げずにどうやって飛距離を出すか。その方法を考えました」

 ボールをバットに「ガツン」とぶつけるのではなく、「スパッ」と振り抜く。インパクトの瞬間のスイングスピードを上げてボールを弾き返す感覚だと、内川は説明した。

 成果は目に見えて表れた。3月28日のロッテ戦では、プロ14年目にして初めて開幕戦で本塁打を放った。しかも、本塁打を含む4安打の固め打ちで"らしさ"も発揮した。その2日後には、2対2で迎えた8回裏に決勝の2号ソロをレフトスタンドに叩き込んだ。

 開幕からの連続試合安打は「9」で途切れたが、16試合を終えた時点で打率.444(リーグトップ)、3本塁打(リーグ5位)、15打点(リーグトップ)の好成績を残している。これはたまたま好調が重なったからではない。オープン戦でも17試合で打率.391、3本塁打、17打点を残しており、2月後半からずっとこの調子なのである。

 ペナントレースはこれからだが、新境地を切り拓いた天才打者がどれだけの数字を残すのか。期待が膨らむシーズンになるのは間違いなさそうだ。

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