外野席応援団のハンパない体力、知識、野球愛 (4ページ目)

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 応援も2014年バージョンの新しいスタイルが取り入れられたらしく、まだ追いつけないファンがたくさんいた。ランナーが出ると、バッターだけでなく、ランナーのことも一緒に応援するのが今年の札幌流のようで、たとえば一塁に大谷がいて、打席に中田がいるとこうなる。

「ゴーゴー大谷、ゴーゴー大谷、かっとばせ~ナ、カ、タ」。

 おいおい、ここは一塁ランナー、走るケースじゃないぞ、と思わず突っ込みたくなる。

 ただし、稲葉ジャンプにだけはつい参加したくなり、気恥ずかしさを振り切って立ち上がってみた。いやぁ、気持ちいいじゃないか。男女別に声を出すファイターズのオリジナル応援には、否応なくテンションが上がる。ファイターズのピッチャーがボール球を3つ投げるとサワサワサワと起こる自然発生的な拍手にだけは正直、賛成しかねるのだが、西川遥輝の半音を駆使した応援歌は短調を思わせる不思議なメロディーだし、陽岱鋼の中国語「加油」を交えた歌詞もなかなかドラマチックだ。

 さあ、ファイターズが追いつき、8回裏にタナボタのパスボールで勝ち越し、あとは武田久が抑えての逆転勝利を待つだけだ。最終回、ファイターズが1点をリードして迎えた9回表。ファンが勝利の黄色いジェット風船を膨らませ始めた途端、糸井嘉男にライト線へ痛烈なツーベースを打たれ、4-4。まさかの同点に追いつかれてしまう。試合前、札幌を巣立っていった糸井や高橋信二に送った札幌ならではの暖かい拍手は、完全に裏目に出た。

 18時15分に始まった試合。

 22時を過ぎると、ワタシ帰るわ、だって生活がありますからと決めているオバサマと、最後まで見るわ、そんなの当たり前じゃないというオバサマに分かれる。23時を過ぎると鳴り物が禁止となり、応援は声と手拍子だけになった。福住発、さっぽろ行きの最終は0時ちょうど。さっぽろ駅まで行けても、ホテルに泊まっている人ならともかく駅近に住んでいる地元の人なんか、そうはいない。中には23時52分札幌発の最終で小樽まで帰らなきゃと追い詰められているオバサマもいたりして、いろんな意味でスリリングな展開となってきた。

 試合に終止符が打たれ、グラウンドとスタンドが歓喜の渦に包まれたのは、23時17分。もうファイターズの負けがなくなった延長12回の裏、小谷野栄一の打球がレフト前に抜けた瞬間、西川がサヨナラのホームを踏むのも待たずに小樽へ帰らなくちゃならないオバサマは席を立って、階段を駆け上がった。小谷野の爆笑ヒーローインタビューに酔いしれたオバサマ方は最終の地下鉄へ、あるいはタクシーの列へと、満足そうにそれぞれの帰路につく。

 ところが──。

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