選手たちは「飛びすぎる統一球」の存在に気づいていた (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

村田修一(巨人/内野手)

「ちょっと飛ぶかな、というぐらいで大きな差はないと思います」

炭谷銀次郎(西武/捕手)

「守っている時に、さらに飛ぶボールに変わったんじゃないかと思う時があります。それはホームランに限らず、ポーンとあがった飛球でも、思ったより飛ぶなぁ、と」

 マスク越しから打者を観察する炭谷は、ある選手の打ち方から「今年のボールは飛ぶ」と確信したと言う。

「名前は出せないのですが、『ボールが飛ぶようになったぞ』と、それを意識した打ち方をしている選手がいました。その選手は飛ぶボール時代、逆方向でもホームランになるので広角に打っていましたが、統一球が導入されるとホームランを諦めて、コツコツとミートに徹する打ち方に変えていたんです。でも今シーズン、逆方向でもホームランになることがわかって、明らかに振りが大きくなっています」

 そして昨日、NPBから「今季、12球団の使用している統一球の反発係数が平均で基準値の上限を上回っていた」という発表があった。規定を上回った反発係数の平均値0.426という数字は、“飛ばないボール”を導入する前の数値に近いとのことで、要はかつて使用していた“飛ぶボール”に戻っていたことになる。ちなみに、選手たちのコメントはこの発表の前に集めたものだ。意識の大小はあるにせよ、全員が違いに気づいていたことになる。

 このNPBからの発表に、楽天の星野仙一監督は「おかしいと思っていた。去年より飛ぶな、と。違反ですよ。責任を取ってもらわないと」と険しい表情でコメントを残した。DeNAの中畑清監督も「開幕前に確認してちゃんと報告が出ていないといけない。現場が困る」とすっきりしない様子だった。

 中畑監督が言うように、開幕前に報告があれば問題なかったのではないか。2年連続でなぜ開幕後にこのようなことが起きてしまったのか。昨年の反省がまったく生かされてないことが残念でならない。

 現時点で原因は特定されていないが、ミズノが勝手に規定違反球を製造・納入するとは思えないし、何よりメリットがあるとは考えにくい。いずれにしても、NPBにはしっかりとした説明をしてもらいたいものだ。これ以上、選手やファンを振り回すことだけはご勘弁いただきたい。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る