A・ジョーンズ流「大物メジャーリーガーが日本で成功する方法」 (2ページ目)

  • ブラッド・レフトン●文 text by Brad Lefton
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 それにしても、これまで日本にやって来た元メジャーリーガーたちは、様々な文化の違いに適応しなければならなかった。例えば、キャンプでの生活もそうだ。メジャーでは、キャンプ中は豪華な家を借り、家族と過ごす。そして高級車で球場に来るというのが普通だった。

 一方で日本は、チーム全員が同じホテルに泊まり、団体で移動するのが普通だ。メジャーを経験した選手であれば、これを受け入れるのは容易なことではない。にもかかわらず、ジョーンズはまったく気にならないという。

「私が日本行きを決断した時、いろいろな違いに順応する覚悟を決めました」とジョーンズは説明した。

「たしかに、たくさんの違いがあります。アメリカでのスプリングトレーニングは、1カ月6000ドル(約62万円)ぐらいの家を借りて、快適な生活をします。ベッドもすごくいいんです。それにくらべ、日本はみんな同じホテルに泊まり、ベッドも全然違います。初めてホテルの部屋に入ったとき、『何だ、この小さいベッドは......』と思ってしまいました。日々の過酷な練習の後、どうやって疲れを取ったらいいのだろうかと......。初めのうちはそういうことに戸惑うかもしれませんが、人生の中にはいろんな選択肢があり、その環境に適応していかなければいけない。これらのこともそのうちのひとつですし、慣れていきながら前に進むしか方法がないんです。ここで野球をすると決め、契約を交わしたのなら、どんなことにでも慣れていかなければならないのです。アメリカでは、練習に行く時は毎日車で通っていました。でも日本では、自転車で球場に行く時もあります。大変どころか、結構気に入っています」

 ジョーンズの、元メジャーリーガーというプライドよりも「チームのために」という思いが最も表れたのが、昨年9月26日の西武戦だろう。2点を追う8回の表、二死満塁でジョーンズに打席が回ってきた。ここでジョーンズは一発を狙いにいくのではなく、コンパクトなスイングで走者一掃のツーベースを放った。結局、これが決勝点となり、楽天が球団創設9年目にして初のリーグ優勝を飾った。

「メジャーにいた時も、自分のためにプレイしたことはありませんでした。目標はいつもチームが勝つことなんです。だから、ホームランを意識したことはありません」とジョーンズは言いながら、逆転の一打を思い出していた。

「実はその前日、同じピッチャーに、逆転の二塁打を打ったのと同じ球種で三振に打ち取られていたのです。だからあの場面は、あのボールでまた攻めてくるとわかっていました。外角低めのいい球だったのですが、よくバットが振れました。幸運にも塁が埋まっていましたし、私も準備ができていました」

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