監督にも迷い!? このまま大谷翔平は「三刀流」を目指すのか?

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 青柳憲司●写真 photo by Aoyagi Kenji

 実際、オープン戦では投手優先の出場を続けてきた。そして大谷は3試合、13イニングスを投げて、2勝0敗、防御率1.38という結果で開幕ローテーションの座をつかんだ。東京ドームでジャイアンツを相手に先発した3月22日には、自己最速タイとなる157キロをマークするなど、5イニングスを投げて5安打4奪三振、無失点。この日は今年のテーマだったカーブを封印し、フォークを軸にしながら、マックスで腕を振ったのは最後の最後だけという余裕のピッチング。二刀流をあれこれと揶揄されながらも、高卒2年目の大谷は、まずピッチャーとしての計り知れないポテンシャルを見せつけた。

 そして、同じオープン戦で見せつけた大谷のバッティングは、ピッチャーとしての能力に勝るとも劣らない底知れなさを感じさせた。何しろキャンプ中、バッターとしての練習は極端に少なかったというのに、いざ本番となると平気で結果を残してしまうのである。試合に出ればマルチヒットは当たり前、左方向へも長打を打てる。やわらかくて力強いスイングは輝きを増すばかりだ。オープン戦で打者として24打数8安打、打率.333を残したとあっては、栗山監督も野手として開幕戦に起用せざるを得なかったのだろう。

 3番、ライト、大谷──。

 開幕戦ではいきなりの3番、しかも守備についた大谷。しかしオープン戦で守備についたのはわずか1試合だった。いかに監督が「練習しなくてもできちゃう」と評価するセンスの持ち主ではあっても、試合勘というのは必要になる。

 それでも打席に入ると、大谷は輝く。何しろ、ことごとく初球を振っていくのだ。この積極性には思わず唸らされる。

 第1打席は1回。インサイド、ベルト当たりにきっちり投げた金子千尋の144キロのストレートをしっかり振って、ファウル。2球目のボールを見送って、3球目、149キロのストレートをまたも強振、結果はセンターフライ。

 第2打席は3回、アウトハイの動くボールにコンタクトしたものの、バットの先に当たってしまい、ファーストゴロ。第1、第2打席、大谷はいずれもバットを折られたのだか、試合後、そのことについて大谷はこう言っていた。

「ボールを動かして芯を外されてたかなと思うので、そこは仕方ないかなと思います」

 そして第3打席は2点を追う5回。ツーアウトからのまたも初球、今度は金子のインサイド高めのカットボールを叩いて、ライトオーバーのツーベースを放つ。

 第4打席は7回、依然として1点を追うツーアウト三塁の場面。またまた初球、金子がインハイを狙った142キロのストレートがシュート回転して、真ん中高めに来る。このボールを大谷が迷いなく振り抜き、左中間へ打ち返した。これが同点のツーベースヒットとなって、金子をマウンドから引きずり下ろした。

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