セ・リーグ新時代の幕開け。開幕戦を託された3人の2年目投手 (2ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi
  • photo by(C)YOKOHAMA DeNA BAYSTARS

 その菅野と昨年新人王を争い、最多勝投手に輝いたヤクルトの小川は、DeNAを相手にたびたび得点圏にランナーを背負うなど苦しい投球が続いたが、要所を締めて6回1失点で勝利投手となり見事大役を果たした。

 オープン戦では防御率6.43と振るわなかったが、練習試合で対戦した中日の谷繁元信監督をして「よく考えた投球をしている。2年目らしく研究している跡が感じられる。おごりがない」と言わせただけのことはある。

 ただチーム事情として菅野の場合とは異なり、エース育成というよりも必要に駆られた開幕投手だったということだ。ヤクルトは昨年の開幕投手である館山昌平をはじめ、ケガ人を多く抱えており、またエースの石川雅規もこの2シーズンほど不調にあえいでいる。つまりチーム状況として小川を立てるほかなく、小川淳司監督も2月の終わりの時点で「前から決めていた」と開幕投手に指名をした。小川はもはやエース候補ではなく、実質的エースとしての役割が求められている。

 そして今回の3選手の中でひとりほろ苦い開幕投手デビューとなってしまったのが三嶋だ。初回に7点を失うなど、2回を投げて9失点の大炎上。普段は表情をほとんど出さない三嶋だが、この日ばかりは違った。川村丈夫投手コーチが「完璧に雰囲気にのまれてしまった」と語ったように、持ち味の躍動感はなく、ストレートもいつものキレを欠いた。

 中畑清監督が三嶋を開幕投手に指名した理由は、今シーズンの球団スローガンと同じ『心』にあるという。昨年の成績は6勝9敗で防御率は3.94。前出のふたりには劣るが、ルーキーながらオールスターや侍ジャパンに選出され、DeNAにとっては期待の星であることは間違いない。

 DeNAはここ10年、三浦大輔以外にエースと呼ばれる投手は出てきていない。開幕投手にしても過去10年を振り返ると大役を担った投手は6人いるが、生え抜きは三浦と高崎健太郎のふたりだけである。

 2年前の球団刷新により変わってきたDeNAに欠けているピースがあるとすれば、新たな象徴となる若きエースの存在だ。三嶋にもその自覚があり、キャンプインをすると自分から率先して投手陣を引っ張るように声を出した。

 中畑監督は「結局、開幕投手は"託せる"かどうか。もちろん高い能力があることは大前提だけど、それだけではない。姿勢、覚悟、自覚、そうしたものを感じさせてくれる投手でなければ任せることはできない」と語っていた。

 三者三様の開幕戦。結果はどうであれ、かけがえのない経験をしたのは間違いない。何より、彼らが開幕投手に抜擢されたことは、セ・リーグの新たな時代の幕開けを予感させた。この財産を今後どのように生かしていくのか、これからの3人に注目したい。

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