藤川、館山、和田......。「松坂世代」の逆襲が始まる

  • 津金一郎●文 text by Tsugane Ichiro
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 松坂は会心の投球ができずに試合後は苦悩の表情を浮かべたが、過去2年間と異なり、そのボールは本来の勢いを取り戻しつつある。昨季は140キロ台前半がほとんどだったストレートが最速148キロを記録するなど、常時145キロを超す。7日のカージナルス戦でも3三振を奪った。メッツを率いるテリー・コリンズ監督は、「いい球を投げていた。5番手の先発として有力候補のひとり」と期待をかけている。

「ここぞという時に決められる確率を上げていきたい」

 カージナルス戦の後に課題を口にした松坂が、かつての勝負強さを取り戻せれば、開幕ロースター入りも見えてくるはずだ。

 最強世代のエースとともにメジャー枠の当落線上にいるのが、世代屈指の技巧派左腕・和田毅だ。2012年にボルチモア・オリオールズに移籍した和田は、同年春のキャンプで左肘を痛めて開幕後に靭帯の修復手術を受けた。リハビリを経た昨年2月にブルペンで投球を始め、開幕後に3Aで復帰したが、メジャー昇格は叶わなかった。そして、今季はシカゴ・カブスとマイナー契約を結び、念願のメジャーリーグデビューを目指している。

 2度の練習試合で3本塁打と課題を残したが、「自分の立場では内容よりも結果。しっかり結果を残したい」と力を込めた言葉通り、オープン戦最初の登板となった7日のエンゼルス戦では2回を3安打3奪三振。アルバート・プホルスやマイク・トラウトといったメジャー屈指の重量級スラッガーとの対戦も、「テレビで見ている打者ばかりなので、楽しんで投げられた。そこで抑えれば、自分の立場ではアピールになる」と、落ち着いた投球で封じた。

 昨季3Aで被弾した9本塁打のうち8本を右打者に打たれた和田にとって、右の強打者のプホルス、トラウトを抑えたことは、大きな一歩となった。

 そのカブスでは、もうひとりの"松坂世代"が復活に向けての第一歩を踏み出した。藤川球児はメジャー1年目の開幕戦で初セーブを記録し、順風満帆なスタートを切ったかに思われたが、直後に右肘の故障が発覚。6月に松坂や和田も経験したトミー・ジョン手術を受けてシーズンを棒に振った。

 通常なら復帰までに1年はかかると言われているが、藤川は今春のキャンプからブルペン入りできるまでに回復。投球を視察したリック・レンテリア監督は「とても良かった。だんだん状態が上がってきたようだ」と笑顔を見せた。

「試合に出たときに見てほしい。リハビリでは何も言うことはないですよ」と話す藤川が、伸びのあるストレートを取り戻して、表舞台に戻る日も遠くはなさそうだ。

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