前田健太も練習中。今、エースたちの間で「スプリット」が大ブーム (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 小内慎司●写真 photo by Kouchi Shinji

 昨年の日本シリーズで田中と投げ合った菅野智之(巨人)も、130キロ台前半のフォークと、140キロ台のフォーク(菅野本人は高速フォークと呼ぶ)に磨きをかけている。その話を山﨑氏に向けると、次のような答えが返って来た。

「落ちる球もひとつじゃなく、ふたつ。ここを投げ分けられるというのが超一流ってことじゃないですか。マエケン(前田健太)もそこに挑戦するのだと思いますよ」

 そして、こう続けた。

「落ちる系のボールの威力が増すかどうかは、腕の振りにかかっています。真っすぐと同じ腕の振りでボールを落とされると、バッターは体が前に出されてしまいバットを止められない。真っすぐと同じ腕の振りをするのは投手の基本なんですが、これが本当に難しいんです。それができれば、それほど落差がなくても十分に通用します」

 空振りを狙うならフォークの方が有効だと思いがちだが、「今はストレートに近い変化球が主流。ストレートのようだけど、ちょっとスライドする、ちょっと落ちるという球が効果的です。一定の落差が出れば、空振りも取れる」と山﨑氏。18.44mの戦いも、年々、ハイレベルな攻防が繰り広げられるようになってきたようだ。

 そしてもうひとつ、スプリットはメジャー挑戦を見越した時の"必需品"となっている面もあるのではないか。昨年、ダルビッシュ有(レンジャーズ)は、メジャー挑戦を表明した田中について、次のような話をしていた。

「スプリットは、コントロールを維持できるならバッターは確実に振ると思います。メジャーでスプリットは間違いなく有効なボールです。ただ、力んだりしてコントロールがつかないのであれば危険。日本ではヒットで収まっていたものが、メジャーだとホームランになりますから」

 前田も今シーズンオフでのメジャー挑戦を明言しており、スプリットに目を向けたのは当然の運びだったのだろう。

「メジャーで活躍できる日本人投手の共通点は、逃げる球か落ちる球で空振りが取れること。メジャーはインコースのストライクゾーンが狭いですし、そこを使って勝ってきた投手より、落とすか逃げる球でしっかり勝負できるかどうかが大事。スプリットもそうした球のひとつということでしょう。しっかりコントロールできるようになれば、十分に通用する球だということです」

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