「パ・リーグのエースに最も近い男」。オリックス金子千尋の誓い (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro

 プロ通算284勝の山田久志氏は、エースについて次のように語った。

「エースの背中を見て、野手は安心感を持ち、攻撃に集中できるんです。攻撃に集中できるリズムやテンポを作り出すのが、エースの仕事」

 そういった意味で、高校時代から田中はたとえ失点したとしても、「ここで打たれたら試合が決まる!」という場面ではことごとく抑えてきた。昨年も満塁の場面で1本のヒットも許さなかったことからも、田中の勝負強さがわかる。

 対する金子はどうか。満塁での被打率.286が物語るように、ここ一番の場面での失点が目立った。そして金子で思い出されるのが、2011年のソフトバンクとの最終戦だ。この試合に勝つか、引き分けるかでオリックスのクライマックス・シリーズ進出が決まったのだが、先発を任された金子は6回4失点で降板し、期待に応えることはできなかった。ここ一番で勝てる投手こそが、絶対的エースの大きな要素ではないだろうか。

 ダルビッシュ有(レンジャーズ)に続き、田中も海を渡った今、パ・リーグを代表する投手として、金子にかかる期待は大きい。金子はシーズンを前に決意を口にした。

「とにかくチームが勝つためのピッチングをすることが、僕の使命だと思っています。そのためにも今年は何でも一番にこだわりたい。負けたくない」

 負けない男となった時、金子は絶対的エースへ、そしてパ・リーグのエースへと上り詰めているだろう。

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