巨人・菅野智之が掲げる「エースとしての目標」

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 2番目の目標としている200イニング登板は、田中将大に対するリスペクトでもある。エースたるもの、シーズンを通して安定した投球内容を見せ、勝ち星と同等かそれ以上に、イニング数を多く投げる。ちなみに昨季、200イニング以上投げた投手はパ・リーグでオリックスの金子千尋(223回1/3回)と楽天の田中将大(212回)だけ。セ・リーグにはいない。

 菅野は昨季の日本シリーズ第2戦で、楽天・田中と投げ合い、6回途中で1失点降板。田中は9回1失点で勝利。このとき、菅野は「本当の意味での1点の重みというものを痛感した」という。

「投手にとって1失点は合格に思われる。でも、それで負けたら意味がない」

 そして同時に田中の投げ続ける姿に、「(先発)投手は、1イニングでも多く投げなきゃいけない。マウンドに立ってなきゃいけないんだ」と痛感したというのだ。

 昨季は29試合で、176イニング。もし同じ試合数の登板としたら、すべて7回まで投げ切らなければならない。それを実現させるためには、球数を減らすこと。それでいて“ここぞ”という場面では三振を奪えなければならない。また流れ(展開)によっては、完投もしなくてはならない。これはすべて、昨季の田中が念頭に置いてマウンドに立っていたことだ。
 
 アリゾナで体重を4キロ落とした菅野だったが、キャンプでのユニフォーム姿はむしろガッシリとして、安定感あるフォームを支えていた。菅野は目深に被った帽子の奥から捕手のサインとミットをにらみ、腕を振る。ストレートが外角低めに決まる。そしてブルペン捕手にこう声をかけた。

「イイ感じ、ですね」

 その表情はエースの自覚に満ち溢れていた。

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