巨人・菅野智之が掲げる「エースとしての目標」

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 昨季の菅野は、特に前半は、あまり力感のないフォームでポンポンとストライクを取る、いわば"省エネ"タイプの投手だった。東海大学でピークと言われた3年時と比べると、巧みだが、いささか物足りない印象も残した。だが抜群の制球力と、ワンシームやツーシームの使い分けもあり、打たせて取りつつ、同時にリーグ3位となる155三振を奪った。

 それでも菅野は満足しなかった。巨人関係者が言う。

「菅野は滅多に口にしないけれど、東海大学を卒業し、1年浪人した時のことをかなり気にしているようなんです。『もし浪人せずプロ入りしていたら、もっといい投手になれたのでは』とか、『浪人して伸び盛りを逸したから、今が限界だろう』というような見方や言われ方は絶対にされたくない。今、彼がモチベーションを上げている根底には、そんな気持ちが働いているんですよ」

 いわば負の思いからの反発。そう考えれば、ストレートのキレとスピードを上げたいという思いは、省エネ投法、悪く言えば急場しのぎの投法から、本来のカラダを目一杯使ったフォームに戻したいという気持ちの表れと思える。200イニング登板という数字も、2年目の投手としては大きな数字だ。

 前出のテレビ局関係者が続ける。

「オフに、菅野は優勝旅行のハワイから帰ってすぐに、自主トレのためにアリゾナに移動したんです」

 アリゾナに『フィッシャー・スポーツ』というアスリート施設がある。ランディ・ジョンソンや工藤公康などがオフに利用していた施設だ。そこで菅野は西村健太朗らと汗を流した。

「投手陣の多くは、オフとなれば内海グループとしてグアムに行きます。でも菅野はアリゾナを選んだ。一部では『内海が全員の費用を持つため、菅野はそれに気兼ねした』という話もありますが、むしろ彼はアリゾナでトレーニングをしたかったのでしょう」

 アリゾナは、他ならぬ浪人時代の2月に、約1カ月滞在した土地だった。その地で1年目を振り返り、2年目の課題と目標を心に刻み込みたかった。

「そのために菅野はグアムではなく、アリゾナに行きたかったんじゃないかと思うんですよ」

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