巨人・菅野智之が掲げる「エースとしての目標」

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 今春のキャンプで、巨人は松井秀喜臨時コーチを迎え、大きな話題をさらった。ときには野手陣を手取り足取りで指導し、2月4日にはブルペンで打席にまで立ち投手のボールを見た。そのとき、唯一、松井に対したのが菅野智之だった。

エースとしての期待がかかる菅野智之。エースとしての期待がかかる菅野智之。

「松井さんが気分で勝手に打席に入ったはずはありません。ブルペンに入る日も、誰の打席に入るかも、すべて原辰徳監督の依頼(指示)があったはずです。つまり原監督は松井さんに菅野のピッチングを見て欲しかった。あのとき、我々マスコミ関係者も『ああ、原監督が望む巨人の次期エースは、やはり菅野なんだな』と実感しましたね」(テレビ局関係者)。

 別の一般紙記者も「長嶋さんが宮崎に来て、ブルペンで菅野を見た時、『背中が重くなった』と独特の表現で、逞(たくま)しくなった体つきについてコメントしていましたが、長嶋さんも巨人を背負う投手は菅野と見ている。その表れだと思いましたね」

 昨季、新人1年目の菅野は13勝(6敗)、防御率3.12の成績を残した。優れた成績ではあるが、それ自体は内海哲也の13勝6敗、防御率3.31と大差はない。にもかかわらず巨人内外の目は、菅野をエースとして見始めている。原監督の甥っ子という "サラブレッドとしての出自"もあるが、他ならぬ投球内容や、意識にもあるようだ。

 前出のテレビ局関係者が振り返る。

「昨シーズン、内海と菅野はともに13勝でチーム最多勝タイ。でもシーズンを通して見ると内海の投球には数字に表れない部分で不安定さが随所に顔を出し、エースと呼ぶには疑問符がつく内容でした。その点、菅野は内海より安定感があった。原監督も『菅野の方に信頼感が持てる』と思っていたはずです」

 昨季を経て、今季の菅野は明確な目標、課題を掲げている。まず「ストレートのキレとスピードを上げること」。そして「200イニングを投げ切ること」。その上で「昨シーズンの成績をすべて上回りたい」と言う。

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