若手投手陣の急成長でDeNAがセ・リーグの台風の目に!

  • 大久保泰伸●文 text by Ohkubo Yasunobu
  • photo by(C)YOKOHAMA DeNA BAYSTARS

 その約1週間後の13日、今度は期待の若手投手の名前を口にした。

「新人3人につられたのか、北方も安定していたよね。ピッチャーらしいピッチャーになったというか、これが続けば戦力になるんだけどな」

 北方悠誠(20歳)は、3年目の本格派右腕で、現状では中継ぎとして期待されている。調子の波が大きく、「この状態では中継ぎでは使えない」と何度も言われながらも、「ストライクゾーンにくれば使えるピッチャーだから。細かいコントロールは期待しない。オレがどこまで我慢できるか、勝負だね」と、指揮官がたびたび口にする期待の若手だ。

 この他にも、「加賀繁(28歳)がいいんだ。先発を希望して取り組んできたのが、いい方向に出ている」と、中畑監督の口から出てくる名前は投手ばかり。「これが続けば、すごい競争になるんだけどな」と喜んだ後、「まあ、この時期はこういう楽しみがあるからね。今まではなさすぎた。やっぱりこういうのがないと面白くないよな」と、投手陣の充実に思わず笑みがこぼれた。

 さらにその1週間後、19日に行なわれた韓国・KIAタイガースとの練習試合。高卒ルーキーの関根大気のサヨナラ打で劇的な勝利を挙げたが、中畑監督が評価したのは、やはり投手陣だった。この日は4年目の加賀美希昇(25歳)が先発し、4回1失点とまずまずの投球。加賀美の後を継いだ6年目の土屋健二(23歳)も3回無失点と好投し、左の先発候補に名乗りを上げた。もともと評価の高かった加賀美はともかく、チームには貴重な左腕である土屋の好投には、「ブルペンよりいい球がいっている。粘りのあるピッチングを見せてくれた」と、中畑監督は手放しで喜んだ。

 そしてその中畑監督が、「彼らは別格」と一目置くのが、ともに2年目を迎える三嶋一輝(23歳)と井納翔一(27歳)だ。ふたりは16日の阪神との練習試合に登板し、ともに2回無失点と好投。中畑監督も「ふたりは昨年よりひと皮もふた皮もむけた。このふたりが高いレベルで開幕投手を争ってくれるのが理想だよ」と、大きな期待を寄せる。

 特に三嶋は、監督だけでなく、周囲の期待も日増しに高まっている。今年のキャンプでは、三浦大輔や評論家の工藤公康氏からカーブを教わり、その習得に励んでいる。昨季はルーキーイヤーから規定投球回数をクリアし、6勝をマーク。武器であるスライダーに加えて、カーブで緩急がつけば、投球の幅も広がり、さらなる飛躍が期待できる。

 中畑監督は、投手陣の現状を「一発目で結果を出さないと、次はもうないぞ、というぐらいになっている」と、激しいチーム内での競争がレベルアップにつながっていると分析している。この状況がシーズンに入っても続くようなら、冒頭の中畑監督の言葉は、現実に近づいていくはずだ。

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る