常勝チーム復活はあるか? ファンが見た「新生ドラゴンズ」

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya

 山口さん(71歳/男性)は、観客席にひとり座り、練習をじっと眺めていた。

「昭和29年からずーっとファンで、子どものころは少年ドラゴンズ(ファンクラブ)に入っていました。私は名古屋に住んでいますけど、試合はCS放送で見て、こういうキャンプとか、ナゴヤ球場でやる秋の練習を見に行くのは楽しいですなぁ」

 そんな山口さんでも今年のドラゴンズには辛口だ。

「まずは伸び悩んでいる若手をいかに育てるか。特に、投手陣がどれだけ育つか。キャッチャーも松井雅人や田中大輔が成長して、谷繁がベンチに座るようにならんといけません。やれ、周平(高橋)がどうだ、平田が4番などと騒いでますけど、平田が4番を打つことがあったら、それは優勝をあきらめた時です。外国人もずっと安い選手を集めてばっかり。それはそれでいいんだけども、去年の楽天のふたり(ジョーンズとマギー)は華があって羨ましかったですなぁ」

 熱を帯びてきた山口さんの声が、球場に響きわたる。

「落合さんには時間がかかってもいいから、フロント、ベンチ、選手がひとつになるような、チームの骨格を築いてほしい。ファンはすぐに結果をほしがるので我慢できないかもしれませんが、私は負けて文句を言うのも、それはそれで楽しいんです(笑)」

 手厳しい言葉の裏にはドラゴンズへの愛情がほとばしる。はるか昔の少年時代からドラゴンズを生活の一部として生きてきた歴史があるからなのだろう。では、若い世代は今回の新体制をどうみているのか。石井さん(19歳/男性)は次のように語った。

「落合さんは監督として復帰するのがいちばんだと思っていましたが、それでは過去に戻るだけだと気付きました。結果的にGMとして戻ってきてくれましたが、これはチームが進歩したということですよ。僕はそう考えます。不思議なことですが、中日は落合さんが絡む時は、いつも勇気ある決断をするんですよ。監督に就任した2004年も、当初は高木守道さんに内定していたみたいなのですが、落合さんを選んで常勝チームを作り上げた」

 ドラゴンズファン歴30年の佐藤さん(39歳/男性)も、落合GM、谷繁兼任監督は予想もしていなかったようだが、球団の判断に異論はない。

「昨年、落合さんの講演会に行ったんですけど、『もう監督はしません』というニュアンスのことを言っていたんです。だから、ドラゴンズ復帰は諦めていたのですが、まさかGMというポストを中日が用意するとは思ってもみませんでした。球団は本当にいい仕事をしてくれたと思います」

 とはいえ、ここでもドラゴンズの現実に対しての意見は厳しく、横に座る奥様が話を引き継ぎ、次のように語った。

「正直、今の戦力で優勝は難しいと思います。落合さんは5年かけて勝てるチームにすると言っていましたが、私はそれでいいと思います。5年かけて、そのあと10年勝てるチームになればいいじゃないですか。落合さんの言うことだから、それを信じて待つことができるんです」

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