ヤクルトファンが望む「宮本慎也の後継者」は?

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Nikkan sports

 ヤクルトのファンとしてキャンプの見学に来ていた平島さん、石井さん、岩井さん、砂川さん(すべて19歳/男性)の4人も、揃って頭を悩ませていた。

「去年は宮本さんの引退を念頭に、田中浩康(31歳/内野手)がキャプテンになり、宮本さんの後継者として期待されたんですが、ケガなどもあってうまくいかなかった」(石井さん)

「川端、山田哲人(21歳/内野手)、上田剛史(25歳/外野手)の3人がチームを引っ張っていってほしいけど、リーダーと呼ぶには若すぎる」(岩井さん)

「やっぱり田中しかいないんじゃないかな。生え抜きだし、年齢的にもちょうどいい」(砂川さん)

「パッと浮かぶのは相川なんです。年齢的にも。生え抜きかどうかより、ヤクルトの場合、キャッチャーはどうしてもファンからの評価が厳しくなりますからね。古田敦也の存在があったので」(平島さん)

 そして4人の会話は停滞する。

「川端は好きな選手だけど、今、それを求めるのは酷だと思います。今年1年を通して活躍した時に、来季以降のリーダーとして期待したい。そうなると、今年のリーダーは田中かなぁ。そのためには試合に出て、結果を残してほしい」(石井さん)

 球場の階段に座る、ヤクルトの帽子をかぶった男性に声をかけた。柏木さん(57歳)は野球が好きで、春と秋のキャンプ地めぐりを5年続けているという。

「宮本選手の引退で、ヤクルトに野村克也さんの教えを受け継ぐ選手は誰もいなくなったんですよね。個人的には、捕手のリーダーがいいと思うけど、相川は野村さんと接点がないでしょう。野村イズムを理解していればいいんですが......(笑)」

 その時、室内練習場からバレンティンが出てきて、即席のサイン会が始まった。柏木さんはその光景を眺めながら話を続けた。

「アレですね、バレンティンをキャプテンにすればマスコミからも注目されていいんじゃないですか。でも言葉の壁があるから無理ですね。だったら田中をリーダーにして、バレンティンに補佐という肩書きをつけるのはどうでしょう。本人もやる気を出すだろうし、チームにもいい影響を与える気がします。あっ、ちょっといいですか」

 そう言って、柏木さんはカバンから厚めの手帳を取り出し、「私もサインもらってきます」と照れくさそうに走っていった。

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