日本一を予感させる斎藤佑樹の復活と大谷翔平の覚醒 (5ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 日刊スポーツ●写真 photo by Nikkan sports

 一方の斎藤は、ブルペン通りのピッチングを披露した。

 右バッターのアウトローに決まったボールにはバットがピクリとも動かず、右バッターの懐を抉(えぐ)るようなシュートに、バットは粉々になった。右バッターに対しては、外のまっすぐで見逃しのストライク、2球目に内側をシュートで抉り、3球目にタイミングを外す変化球をポンと投げる。まさに、バッターをギリギリまで見ながら、内へ、外へポンポンと投げ分けていた。中田翔に甘くなったインコースのストレートをレフトへ弾き返されて1点を失ったものの、リズミカルなピッチングは斎藤の復活への第一歩を強く印象づけた。登板後、斎藤は珍しく高揚したまま、報道陣の前に立ってこう言った。

「去年の11月から、この日だと言われていて、緊張感もありましたし、自分にプレッシャーも掛けてきたつもりです。投げられなかったことを思えば、こうして試合でバッターに投げながら、ピンチで何を投げようかと考えることさえも、メチャクチャ楽しい。今日もここにくるまで、高まる気持ちを抑えるのに必死でした。点を取られてしまったのは悔しいし、ゼロで行きたかったけど、これから僕の中でいろんな戦いがスタートすると思いますし、もう一段階、ステップアップして、何をしなくちゃいけないのかということをひとつひとつ、潰していきたいと思っています」

 そして、紅白戦で見せたふたりのピッチングについて、栗山監督はこう振り返っていた。

「翔平はね、佑樹が持っているものを持ってない。要するに、こう投げたらバッターはこう打ち取れるとか、ここはこういう投げ方をしていくと点を与えずに済むとか、そういうワザというのかな。やっぱり翔平の場合、いい球を投げようとする意識が強すぎる。勝つためにはいい球が必要なんだけど、勝つことといい球を投げることのまとめ方がうまくいっていないような気がするんだよね。逆に佑樹は今まで無意識にできていたことが、意識してようやくできるようになってきた。ようやく本当の勝負ができるところまで来たという印象かな。もし肩が万全じゃなければ2月8日には合わせられないと思ったし、そこに合わせられるなら、今年はいけるという思いがあった。そういう意味では、前に進み始めたわけだし、それが何よりも大事なことだと思うから、よかったと思うよ」

 日本一から逆算したファイターズの指揮官、3年目のシナリオ。

 劇的なエンディングを描くためには、伏線が欠かせない。それが、斎藤と大谷の飛躍だ。そのプロローグとして作り上げた紅白戦という舞台で、ふたりの役者は存分に持ち味を発揮した。ダブル主演の豪華競演は、栗山監督の思惑を遥かに越える相乗効果をもたらしたような気がしてならない。

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