田中将大に伝えておきたい「メジャー流キャンプの心得」 (2ページ目)

  • photo by Getty Images

 日本のキャンプにはトレーニング的な意味合いもありますが、メジャーは試合のための調整という感じです。野手がキャンプインするまでに、まずはピッチャー同士で投内連携の練習をします。あと、僕は指名打者制のないナ・リーグでしたので、バッティングやバント練習もやらされました。ピッチングのない日はファーストゴロのベースカバーとバント、バッティングばかりで、「キャンプ中はピッチングよりバッティングのほうが長い」と感じたくらいです(笑)。マー君のヤンキースは指名打者制のア・リーグだから、練習メニューが違うと思いますけどね。

 ブルペンに入るのは隔日で、時間が決められていて、1回10分くらいです。その理由は故障させないように管理しているのと、メジャーのキャンプにはたくさんの選手が参加するので、平等にチャンスを与えるためです。「もっと投げたい」と思った時は、練習が終わった後に誰か相手を捕まえていました。ブルペンに入って投げると怒られる可能性があるので、平地のグラウンドで投げていましたね。ブルペンに入らない日はキャッチボールで多めに投げて、投げる感覚をつかんでいきました。

 キャンプ中、ブルペンに入るのは2~3回程度で、その後はフリーバッティングに登板します。メジャーはとにかく実戦重視。試合の中で球数を増やし、感覚を磨いていくという考え方です。3月になるとオープン戦が始まり、僕は30イニングくらい投げていました。中4日で投げながら、どうやって次の登板までにコンディションをつくるか、体に覚えさせていくのです。

 先発ピッチャーにとって、最も大事なのは回復の感覚をつかむこと。オープン戦で自分の調整法を確立して、そのまま開幕に入っていくのがベストです。実戦で投げながらピッチングの感覚が仕上がり、開幕を迎える頃には万全の状態になっていました。

 キャンプの過ごし方以外にも、メジャーでは独特の風習がたくさんあります。特に下っ端のルーキーは、雑用が多いんです。例えば、遠征のチャーター機では、置いてあるビールと水を先輩に配らないといけない。余ったビールを空港からホテルまで行くバスに持っていき、配って回るのもルーキーの仕事です。ルーキーと言っても年齢は関係ないので、初めはビックリしました。僕は33歳のルーキーでしたが、「メジャーの風習やから、やらなあかん」と思っていました。

 国が変われば、事情や考え方が変わるのは当然のことです。例えば、上下関係のある日本では、コーチの言うことを聞かないといけません。しかしアメリカでは、コーチの言っていることが違うと思った場合、自己主張する必要があります。納得しないままコーチの言う通りに練習していると、受け入れたと見なされるからです。「やりたくない」と主張して、初めて話し合いの場が持たれます。結果的にやらなければいけないとしても、自分が納得してやるのと疑問を持ちながらやるのとでは違いますよね。

 このように、グラウンド内外でメジャー流のやり方がありますが、マー君は適応力のあるピッチャーですので、すぐに慣れていくと思います。いいキャンプを過ごして、メジャーで活躍する姿を早く見たいです。

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る