楽天・立花球団社長が語る「田中将大なき未来予想図」 (2ページ目)

  • 中島大輔●構成 text by Nakajima Daisuke

―― 確かに勝ち星は打線の援護が関係してきますが、防御率やゴロ率はピッチャーがコントロールできる要素が強いですね。

「皆さん、『田中が抜けた24勝分は大きい』って言います。でも今シーズン、田中がいたとして計算した時に、「昨年は24勝だったから、今年は26勝する」って見る人はいないですよね? 確かに、15勝か16勝分はなくなると思います。そういう基準で議論をすると、そんなに戦えないことはないかな、と」

―― 報道陣に「田中の穴をどうやって埋めるのか」と訊かれた際、「得点を上げればいい」という話もしていましたね。

「失点が増えることを想定すると、得点を上げるしかありません。それに関しては、ケビン・ユーキリスの加入が一番重要です。もうひとつ言えるのは、AJ(アンドリュー・ジョーンズの愛称)が日本の野球に慣れて、昨年よりもいい結果を残すだろうということです」

―― 「田中が抜ける」とネガティブな見方をされることが多いですが、確かにポジティブな要素もありますよね。ドラフトでは松井投手、内田靖人捕手と大器と言われる高校生を1、2位で指名しました。高校生の上位指名はチーム方針ですか?

「僕らの仮説では、野手は25~26歳、投手は23~25歳がピーク。極端に言うと、大学生のピッチャーはほぼ完成されていて、伸びしろがあまりないんです。ましてや大卒の社会人だとすでにピークにあり、そこからプロで育てるとなると、失敗した時のリスクがものすごく大きい。なので、年に1回しかないドラフトでは、基本的には高校生に投資すべきだというのが僕の考えです」

―― 逆に言うと、2012年ドラフト2位で三重中京大学から入団した則本昂大投手は、ピーク時の能力値が高かったから獲得したんですか?

「まだ23歳なので、あと1、2年はパフォーマンスが伸びます。まだまだ進化すると思います。過去の数字から判断していることなので、当然個人差はあります。でも則本くらいの年齢のピッチャーは、完成していないとダメですよね。実際、スピードはもう伸びないかもしれませんね。逆に高校生の松井は、あと2、3キロ伸びる可能性があります。森は去年、身長が3センチ伸びたんですよ。そういう話を聞いても、ワクワクするじゃないですか。そういう選手を獲り続けて、ウチがちゃんとした育成システムを持ってさえいれば、彼らが花開く。それを繰り返していけば、チームは強くなる」

―― 長期的な視点でチームを作っているんですね。

「慌てて、即戦力の社会人を獲り続けると、1、2年は持つかもしれないけど、その見返りはそれほど大きくありません。過去を振り返ると、エースや4番は高校生から生まれるケースが多いです。大学出身のエースや4番は、なかなかいません。もちろん、いないとは言わないですけど、確率的に少ない。エースや4番になれる人材をちゃんと獲っていくという方針のほうが、正しいと思っています」

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