2014.02.01

楽天・立花球団社長が語る「大物メジャーリーガーを獲れる理由」

  • 中島大輔●構成 text by Nakajima Daisuke
  • 小内慎司●写真 photo by Kouchi Shinji

―― ユーキリス選手を獲得しようとなった時、星野(仙一)監督は何と言っていましたか?

「『ケガが大丈夫であれば、ぜひ欲しい』と。それ以外は何も言いませんでした。皆さんがどういうイメージを持っているかはわかりませんが、星野監督はそんなにわがままを言う人ではないですよ(笑)」

―― ここで、あえてストレートに聞かせてくだい。なぜ、楽天は大物外国人を獲得できるのですか?

「ウチのスカウトが優秀だからです。在米スカウトのデリック・ホワイトは、尋常じゃないくらいの人脈を持っている。『ユークとの交渉はどうなった?』って聞いたら、翌日にはアポを取って、自宅に行けるスカウトがウチにはいるんです。今も、リストに上がってくる選手はハンパじゃないんですよ、名前は出せないですけど(笑)。デリックが『この選手を獲ろうよ』と言ってきて、『獲っても、どうやって使うんだ?』っていう議論を毎日するくらいです。彼の意見を、安部井や佐々木がまとめてくれるので、僕は細かい話にはタッチしません。星野監督と三木谷(浩史)さんとのコミュニケーションをよくしているくらいで……。意思決定に関わる人間がオーナーを含めて7人と、組織が小さいので、意思決定は早いと思います。あとは、AJの存在も大きかったと思います。AJの言葉と僕らの言葉では、ユークへの伝わり方が全然違いますから。AJがいなかったらたぶん、ユークは来なかったんじゃないかな」

―― 昨年、ジョーンズ選手を獲得したのは本当に大きかったのですね。

「今回のことだけでなく、間違いなくチームを変えてくれましたから。例えば試合後、AJが星野監督とハイタッチして、その後、お互いケツを叩き合うことが毎試合行なわれます。最初はAJが星野監督のケツだけを叩いていたんですが、星野監督も叩くようになって。そのシーンを最初に見たとき、ホントに涙が出るほど嬉しかったですね。監督にそうやって接するのは、日本の選手では無理ですから」

―― 特に星野監督は(笑)。

「星野監督のケツを叩ける人って、AJ以外にいないですよ。でも、それはすごく重要なことで、そういうことがあってから、嶋が星野監督に近寄っていくようになっていったんです。小さいことから始まり、監督やコーチ、選手たちの距離が縮まって、本当にひとつになった」

―― 銀次選手が昨季終盤、「ジョーンズは技術、精神面でいろいろアドバイスしてくれる」と話していました。

「昨年、ウチのチームではエアガンが流行っていたんですね。4タコ(4打数無安打)だったら次の日の試合前、AJが『オレは4タコだったから』と言って、自分の足を4回打つんです。負けた次の日はムードが暗いじゃないですか。AJは4タコの選手を捕まえて、『お前も打て』ってやるんです、もちろん痛くないやつですが(笑)。そのこと自体は何の意味もないかもしれないけど、144試合を戦う上ではすごく重要だと思うんですよ。それに、AJは監督に『あの守備、おかしくないか?』と言ったり、外野守備を見て『もっと前がいい』と指示を出したりもします。『どこでプレイしても野球は野球。常に一緒じゃなきゃいけない』って。アイツのメンタリティがチームに与えた影響は、計り知れないと思います」

―― ジョーンズ選手を獲得した時点で、これほどの影響を及ぼすと考えていましたか?

「正直、あそこまでやってくれるとは思いませんでした。今でも覚えているのが、昨年のキャンプの初日。チームのみんなでグラウンドを3周くらいしたんですけど、AJは1周半くらいで走るのをやめたんですよ。『ヤバイ』と思いましたね。『走れない選手を獲っちゃった』って。アイツがチームの中心になってやってくれるなんて、あの時は思えませんでした」