谷繁元信が思い描く「選手兼監督ならではの2014年の戦い方」

  • キビタキビオ●構成 text by Kibita Kibio
  • 五十嵐和博●写真 photo by Igarashi Kazuhiro

野村 攻撃面についてはどう? ランナーで出塁している時なんかは難しいよね。

谷繁 攻撃の方が難しいかもしれないですね。自分が打席の時に自分でサインを出すわけにはいかないですし。そのことについても、たとえば「ここでゲームが動いたら、セオリー通りバントのサインを出しておきましょう」とか、前もってある程度決めておくと思うんですけどね。もし、どうしても「ここは違う!」と思ったら、プレイを止めるかもしれないですけど......。そういうことも含めて、これから考えていきます。

野村 選手兼任ということで、どういうパワーバランスになっていくかな?

谷繁 今年に関しては、選手の方が割合的には高いかもしれません。ただ、選手に専念というのはどう考えても無理なので、"試合に出場する機会が今年は多い"という意味です。でも、選手としてダメな時は代えますよ。相手投手との分が悪いなと思えば、自分に代打を出すかもしれない。やはり、チームの勝利を最優先に考えて動かなくてはいけないですから。

野村 キャッチャーが兼任監督するいちばんの強みは、自分自身でボールを受けられることじゃないかな。選手兼任監督は、キャッチャーだからこそできるんだろうなと思うよ。ピッチャーには無理だし、外野手はさらに難しく、厳しいよ。

谷繁 昔はピッチャーの兼任監督(※)もいましたよね。

※1970~71年に阪神・村山実が投手と監督を兼任。

野村 でも、ピッチャーは自分で投げていて「オレ、もう代わる」って言うことは絶対にないと思うよ。自分から「代わる」と言ってしまったら、ピッチャーとしてはもう終わりだからね。中には例外もいるかもしれないけど......。ピッチャーが監督を兼任するというのは、物理的にもメンタル的にも難しいと、僕は思うよ。

―― 現在、中日の野手陣にベテランが多いと指摘されていることについてはどう思いますか。

谷繁 よく言われますけど、ベテランを追い抜くほどの若手がいれば使うでしょう。力のある人が試合に出る。単純にそれだけです。将来をにらんで、若手を我慢して使うという考えはないですね。

野村 そのとおりだと思う。仮に、レベルが一緒なら、僕だったらベテランを使う。ベテランはある程度計算できるじゃない。たとえば、何試合出て、どれぐらいの成績を残すとか。でも若手は、力がついてきたとしても波が激しいし、落ち込んだ時に盛り返せるかどうかも未知数。そもそもベテランという言葉があまり良くない。現状でそのチームにいちばん必要な選手がたまたま年齢を重ねているということだから。

谷繁 そうですよね。だから、何でみんな無理やり世代交代させようとするんだろうって思うんです。たとえば、ベン(和田一浩)が2011年に打率.232というときがありました。それが続けば替えなきゃいけない。でも、アイツはちゃんと取り戻した。右バッターで通算打率が3割を超える選手はそうはいないですしね。守備にしても、たしかに肩は前よりは落ちてきましたけど、素早く正確に投げることができる。だから、無理に若い選手を起用する必要はないと思っています。

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