谷繁元信が語る「選手を引退するときの基準」 (3ページ目)

  • キビタキビオ●構成 text by Kibita Kibio
  • 五十嵐和博●写真 photo by Igarashi Kazuhiro

野村 バッティングについてはどう? 昨年は5月くらいまで3割打ってたよね。「調子良すぎる」って、あの頃は言っていたじゃない?

谷繁 あの後、へばりました(笑)。ここ数年は、2割3~4分。ホームラン5、6本、30打点ちょっとというのが僕の成績です。劇的に上昇するとはちょっと考えられませんので、最低でもこれらの数字は残したいです。通算打率が.241ですので、1試合に1本出ればいいという感じです。ただ、その1本をどういう場面で打つかですよね。チームにとって価値のある1本をいかに打つことができるかが大事だと思っています。

野村 ホームランも年間5、6本程度だけど、毎年確実に打っているよね。飛距離が落ちたと感じることはある?

谷繁 一時より落ちているかもしれませんが、自分のポイントでしっかりスイングできたら、まだ飛んでいく感覚はあります。元々、ホームランバッターじゃないので、スタンドインしなかったから力が落ちたと感じることはないです。

野村 選手として、オレがいちばん心配しているのがバッティングなんだ。この年齢になると視力の低下もあると思うけど……。

谷繁 昨年から試合中はコンタクトレンズをつけています。

野村 目は体の反応に影響するからね。キャッチャーとしては、体さえ動けば、受けて捕って投げて、リードも経験があるからできるけど、心配なのはバッティングと目だよ。

谷繁 僕、キャッチャーでバッティングがいい人ってすごいと思うんですよ。野村(克也)さん、古田(敦也)さん、阿部(慎之助)とかですね。よく集中力が持つなと思います。あと握力も。僕は3、4打席目になると、力が入りづらいんですよ。

野村 1日、150球ぐらいの球を受けて、返球しているわけだからね。

谷繁 体調が良くない時は、試合中盤から手がむくんできたりします。そうなると、1打席ごとに手の感覚が違ってくるから、バットの持つ位置を変えたりしています。常に万全というのは本当に少ないですね。

野村 今、野村さんや古田さんといった選手兼監督の経験者の名前が出たけど、何か聞いてみたいことってある?

谷繁 野村さんは、これまであいさつ程度しか話をしたことがなかったのですが、先日、テレビの収録で初めてゆっくり話をさせていただきました。その時に感じたのは、最終的に行き着くところは一緒なんですが、僕とはタイプ的に違うなと。何が違うのか、具体的に言われると説明するのが難しいんですが……。

野村 行き着くところというのは、最終的にチームが勝つためにはどうするかを考えるということ?

谷繁 そうです。チームによって、勝つ確率が高い戦い方はそれぞれだと思うのですが、たとえば野村さんがよく言われていたID野球は、ストライクゾーンを9分割にして、「こう攻めたら打ち取る確率が高い」というものじゃないですか。もちろん、それは絶対に必要なことではあるのですが、野球って常に動いているものだと僕は思っています。ノートの上で配球ができるほど簡単じゃものじゃない。当然、野村さんの理論もそれをわかってのことだとは思いますけど……。

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