谷繁元信が今だから語る「監督就任と組閣の舞台裏」 (2ページ目)

  • キビタキビオ●構成 text by Kibita Kibio
  • 五十嵐和博●写真 photo by Igarashi Kazuhiro

野村 昨年の監督就任直後の秋季練習の時に、選手を集めて最初に話したことを、もう一度この場で話してよ。

谷繁 「2000本打った時にも言いましたが......」と切り出した時のですか?

野村 うん。

谷繁 あれは、僕が2000本安打を達成した試合(2013年5月6日)の後に神宮のクラブハウスで話したことなのですが、あの時は借金が7つもあって、その日も満塁ホームランを打たれて逆転負けしたんです。自分の2000本よりもチームの調子が悪いことがものすごく気になっていて、「このチームはこんなに弱いチームじゃない。もう1回強いドラゴンズを取り戻したい」と。秋季練習の時も同じことを言って、「そのためには個人個人が何をしなきゃいけないか? ということを考えてやって下さい」と言いました。やはり、自分が選手としてやっていますから弱いとは思いたくないですし、実際、弱くないですからね。

── 落合GMとは、頻繁にお話をされているのですか?

谷繁 何か動きがある時には、必ず連絡を取り合うようにしています。話は僕より細かいですよ。普通、ひとつのことを1から伝えるとして、半分くらいまで聞けば大体内容がわかるじゃないですか。でも、落合さんは絶対に10まで説明します。妥協がないです。

野村 監督と選手という関係の時とは、関わり方が違ってくるよね?

谷繁 実は、落合さんが監督の時はほとんどしゃべってないんです(笑)。とはいっても、まったく会話がなかったわけじゃないですし、監督室や風呂などで、時々話はしていました。監督と選手というのは付かず離れずという距離感が大切だと思うんですよ。ただ、今の主力メンバーは一緒にプレイしている連中なので、その点は心配していません。

野村 オレの中の落合さん像も、「勝負事に対して妥協がない」というのがある。2007年の日本シリーズで、完全試合を継続していた山井大介を代えた場面があったでしょ。賛否両論あったけど......。

谷繁 あれは、選手の意見を取り入れてくれたんですよ。最初、僕と山井で話をして、森さん(繁和/今季からヘッドコーチ)が山井と話をして、そこから落合さんに話が行っているので。最終的に交代を告げたのは落合さんですけど、それまでにちゃんとしたコミュニケーションがあって代えていますからね。それを知らない人は、落合さんは冷たいとか思うのでしょうけど、中にいる僕らにとっては当たり前のことでした。

野村 あと、個人的に印象深かったのは、オレが2006年に解説者になってキャンプであいさつに行った時。それまでほとんど面識がなかったのに、30分くらい懇々と野球の話をしてくれたんだ。

谷繁 話、大好きですよ。以前、キャンプ中にロッカーに来て、僕とかベン(和田一浩)とか選手が揃っているところで、「オメーら"ズック"って知ってっか?」って言うんです。僕らは靴のことだってわかるけど、30歳前後の選手はわからない。「お前、ズックも知らねーのか!?」って。そんな話をするんですよ。それも1から10まで(笑)。

野村 ズックの話も1から10までなんだ(笑)。

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