ソフトバンク・東浜巨が誓う「2年目の逆襲」 (2ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • 繁昌良司●写真 photo by Hanjo Ryoji

 9月23日のロッテ戦(QVCマリン)でようやく一軍に昇格して、プロ初勝利をマーク。しかし、喜びも感慨もない。「嬉しい気持ちより、ここまで時間がかかり申し訳ないという思いの方が大きかった」と後に振り返った。そして10月5日の今季最終戦でプロ初完封を飾り3勝目。それでも、複雑な思いは変わらなかった。

 同じ轍(てつ)を踏まないために、プロ初めてとなるオフの過ごし方が大事になる。だが、そもそも東浜に「オフ」などなかった。11月からの約2か月間、プエルトリコに渡りウインターリーグに参戦した。

 ソフトバンクでは2010年オフから毎年、中南米を中心に各地のウインターリーグへ選手を派遣している。特に目を引く成果を上げた選手では、2011年にドミニカ共和国のウインターリーグに参加した大隣憲司である。翌年自己最多の12勝を挙げて、第3回WBCの日本代表入りも果たした。大隣がウインターリーグの利点を解説する。

「シーズンが終わった直後だから、反省点や課題をすぐに試合の中で試すことが出来る。公式戦じゃないから変に結果にこだわらなくてもいい。練習でも確認作業などは出来ますが、試合の方がより明確になりますからね」

 ただし、中南米のウインターリーグは決して調整の場ではない。メジャーへ売り込むための「見本市」という特性もある。そして結果を残せなければ「クビ」もある。今季、ソフトバンクから派遣された選手の中にも結果を残せず、途中からまったく出番がなくなった選手もいた。そんな中、東浜はしっかり結果を残してみせた。帰国した時点でチーム最多の4勝を挙げ、さらにリーグトップの42奪三振をマークしたのだ。

「充実した時間を過ごすことが出来ました。落ちるボールを覚えて、三振をとれたのが大きかった」

 テーマにしていた決め球の習得に自信を掴んだ。シーズン中、コーチから「使えない」と酷評されたツーシームを改良。人差し指と中指を縫い目より外側にかける。スピードがありながら、フォークボールのように落ちるのだという。さらにチェンジアップも様々な握りを教わった。「たとえば......」と言いながら、ボールの握りを見せてくれたが、少なくとも3種類ほどのバリエーションがあった。

 また、「外国人選手を抑えることが出来たので、苦手克服になったかな」と照れるように笑った。思えば、デビュー戦で満塁弾を打たれたのはアーロム・バルディリス(オリックス→横浜DeNA)。続く試合でも楽天のアンドリュー・ジョーンズに手痛い一発を食らっていたのだ。

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