取得まで最短7年。メジャーに近づいてきた日本のFA20年史 (3ページ目)

  • 津金一郎●文 text by Tsugane Ichiro photo by Nikkan sports

design by Unno Satorudesign by Unno Satoru 一方、FA権を行使する選手とは対照的に、FA権を取得してから1度も行使せぬまま9年が過ぎた選手もいる。42歳になる来季も現役を続行する西口文也(西武)だ。彼がFA権を取得したのは、自身8度目の2ケタ勝利をマークした入団10年目の2004年。抜群の存在感を放つ球界屈指の右腕が、この時にFA宣言していれば、引く手あまただったのは間違いなかった。だからこそ、生涯・西武を貫く西口は今季4試合で0勝2敗ながらも、現役を続けられるのだろう。

 1993年から導入され、試行錯誤が繰り返されてきたFA制度だが、国内移籍の活性化という点で見れば、2008年のルール改正は今のところは成功していると言えるのではないだろうか。1993年に導入されてから5年間ごとでFA移籍の成立数を比較すると、1993年~1997年が17件(国内16件/海外1件)、1998年~2002年が17件(国内11件/海外6件)、2003年~2007年が21件(国内11件/海外10件)だったのに対し、2008年~2012年は34件(国内21件/海外13件)。このうちCランクの移籍が10件あり、FA移籍の補償を細分化したことが、国内移籍の増加につながった(2013年のFA移籍成立数は8件で、このうちCランク移籍は3件)。

 迎える2014年は、順調にいけば各球団の主力級がこぞって新たにFA権を取得する。嶋基宏(楽天)、岸孝之、炭谷銀仁朗(西武)、成瀬善久(千葉ロッテ)、松田宣浩(ソフトバンク)、金子千尋(オリックス)、武田勝、大引啓次(北海道日本ハム)、西村健太朗(巨人)、能見篤史(阪神)などである。そのため、2013年オフに嶋と4年契約を新たに結んだ楽天のように、各球団は長期契約によって引き留めようとしている。だが一方で、今季15勝8敗でパ・リーグの最多奪三振のタイトルを獲得した金子千尋のように、8000万円増の年俸2億円+出来高払いで1年契約したケースもある。果たして、来年のオフ、FAを取得する選手たちがどういう決断を下すのか。その動向がFAの新たな歴史を作ることになる――。

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