近くなったメジャーリーガーへの道。FAで海を渡った男たち

  • 津金一郎●文 text by Tsugane Ichiro photo by Getty Images

 FAをめぐる状況が変わる中、FA移籍を積極的に活用してチームの再建に成功したのが阪神だ。星野仙一が監督に就任した2001年オフに5年12億円で片岡篤史(日本ハム)、翌2002年オフには4年総額12億円で金本知憲(広島)を獲得した。金本は入団会見で、「大観衆の中で試合を決める一打を打ちたい」と語ると、その言葉どおり、移籍1年目から勝負強さを発揮。1995年からの8シーズンで6度も最下位を味わっていたチームをリーグ優勝に導く原動力となった。

 また、制度が導入されて10年が経ち、2度目の権利取得を果たす選手も現れる。1994年に西武からダイエーにFA移籍していた工藤公康は、福岡ダイエーを悲願の日本一に導いた1999年オフに自身2度目のFAを宣言する。1度目の時にも獲得に動いた地元・中日の誘いを再び断り、巨人に入団。2000年の日本シリーズでは古巣・福岡ダイエーを叩いて、巨人に6年ぶりの日本一をもたらした。

 一方、最初に権利を取得した1997年、横浜に宣言残留した谷繁元信は、2001年シーズンに2度目のFA権を取得すると、当初はメジャー挑戦を表明していたものの、4年12億円で中日へFA移籍。2005年に3度目のFA権を取得した際には宣言残留し、2009年には4度目となる再取得を果たしている。

 1993年の導入当初は形骸化を危ぶむ声もあったFA権だが、時代の流れとともに日本のプロ球界を取り巻く環境も様変わりし、FA制度は成熟の時を迎えることになる――。

※フリーエージェント20年史(3)に続く

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