FAの歴史を振り返る。最初にFA権を行使したのは誰?

  • 津金一郎●文 text by Tsugane Ichiro photo by Nikkan sports

 FAで補強を繰り返して巨大戦力となった巨人だが、生え抜き選手が出場機会を求めて国内の他球団に新天地を求めたケースは、2013年現在までで1例しかない。それが、1993年の駒田徳広だ。同じ一塁手の落合がFA宣言して巨人に加入することが濃厚だったことや、当時コーチの中畑清との確執もあってFA宣言となった。32歳で横浜に移籍した駒田は、マシンガン打線の主軸を担って1998年の日本一に貢献し、2000年に2000本安打を達成すると、バットを置いて現役を退いた。

 また、他チームのエースや四番を口説き落とし続けた長嶋茂雄をして、翻意させることができなかった例外が、1997年の吉井理人(ヤクルト)だ。中日、西武なども獲得に動くなか、巨人は吉井に対して4年12億円と破格の条件を提示。しかし、吉井は長年抱いてきた夢を実現させるべく、FA権を行使してニューヨーク・メッツと契約。日本人選手初のFA権を行使してのメジャーリーグ移籍を実現させた。

 FA制度が導入されて5年目、この吉井が下した決断が契機となって、FA移籍は新たな展開を迎えることになったのである――。

※フリーエージェント20年史(2)に続く

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