阪神の新守護神、呉昇桓は本当にすごい投手なのか? (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke photo by Getty Images

「真っすぐはバッターの手もとで伸びてきて、スピードガンの表示以上に速さを感じました。投球フォームにブレがないから、コントロールが良い。非常に安定感があり、バッターからすると厄介なピッチャーです。スライダーもキレがいい。タイプ的に言うと、左と右で違うけど、球の速かったころの岩瀬仁紀(中日)に近いですね。球の角度、ボールをコントロールする技術の高さも似ています」

 呉昇桓には巨人、楽天、ソフトバンク、オリックスも興味を示していたと報じられている。そんななか、阪神が獲得できた理由は4つあると、前出の慎氏が言う。

「阪神はどこよりも早くからラブコールを送り、呉昇桓にとって信頼感につながったのが、ひとつ目の理由です。ふたつ目はVIP待遇。春季キャンプでは、韓国料理と韓国式サウナが用意されるようです。3つ目は、阪神が名門球団だから。日本でプレイした韓国人投手は多くいますが、縦縞に袖を通すのは呉昇桓が初めて。彼は自信家なので、そういうところに誇りを感じている様子です。4つ目は、大阪にはコリアンタウンがあること。そこにも愛着を感じたようですね」

 以上の点を総合すると、呉昇桓にとって阪神は、環境がそろったチームと言える。一方、虎党にも頼もしいデータがある。過去に来日した韓国人投手には林昌勇のほかに、宣銅烈(ソン・ドンヨル/1996年~1999年・中日)、趙成珉(チョ・ソンミン/1996年~2002年・巨人)、鄭珉哲(チョン・ミンチョル/2000年~2001年・巨人)、具臺晟(ク・デソン/2001年~2004年・オリックス)らがいるなか、林昌勇や宣銅烈のようにクローザーが好成績を残している点だ。慎氏が言う。

「韓国のクローザーにとって、日本は仕事をしやすい環境です。林昌勇が話していましたが、『韓国ではロングリリーフが当たり前だったけど、分業制が確立している日本では抑えの1イニングに集中できる。だから体調管理しやすい』とのことです。呉昇桓は、林昌勇から『日本のチームメイトに早く溶け込むように』など、私生活を含めてアドバイスをもらっています。また、本人も韓国メディアに『日本語を勉強したい』と話していました」

 阪神のチーム事情に目を向けると、2013年はクローザーを固定できずに苦しんだ。現代野球において、確実に1イニングを任せられるセットアッパーとクローザーの存在は不可欠だ。18年ぶりの優勝を飾った2003年は、ジェロッド・リガン、安藤優也、ジェフ・ウィリアムスが必勝リレーで試合を締めくくり、2005年には「JFK」こと、ウィリアムス、藤川球児、久保田智之がリーグ制覇の原動力になっている。

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