かつて「即戦力」と呼ばれた社会人投手の復権はあるのか? (2ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • 日刊スポーツ●写真 photo by Nikkan sports

 社会人チームの減少に反比例して大学のチーム数は年々増加傾向にある。20年前は325チームだったのが、現在は378チームある。これによって、高校生の進学事情も大きく変わったと宮本氏は言う。

「昔は高校から社会人に進んで、そこで成長してプロに入る選手が結構いたんですよ。野茂や潮崎などは、まさにそのタイプだった。でも、社会人チームの数が減り大学の受け皿が広がれば、自ずと大学に進む選手は増えます。それに地方の大学も野球に力を入れるようになって、注目度も上がってきました。地方の大学でも頑張ればプロに行けるんだ、という風潮になっています」

 こうした流れもあって、社会人に進む場合も大学を経由してからというのが圧倒的に増えていった。ソフトバンクの永山勝スカウト部長は次のように語る。

「本当にいい素材は高校か大学の時にプロにスカウトされています。もちろん、遅咲きのタイプだったりするケースはあるかもしれませんが、正直、素材でいえば大学生の方が上。ただ、牧田や攝津のように、社会人で自分のスタイルを築き上げ、それからプロに入った選手は活躍する傾向があります。社会人の選手を見る時に大事なのは、素材よりも人と違うものを持っているかどうか。あと社会人出身の選手に言えることは、トーナメントという一発勝負で鍛えられたメンタルの強さがあり、人間的にもしっかりした者が多い」

 今秋に行なわれたドラフト会議で、社会人投手は1位の4人を含む、23人が指名(育成選手は除く)された。そのほとんどが、高校、大学時代は無名ながら、社会人に進んでから力をつけた選手たちだ。

「今年のドラフトは不作と言われていましたが、あくまでも現時点での話です。言い換えれば、まだまだ伸びる要素を持っているということ。オリックスの金子(千尋)、中日の吉見(一起)も社会人出身で、プロに入ってから伸びた選手。今年のドラフトで指名された社会人投手もこれから伸びそうな選手が多く、プロに入ってから十分期待できると思います」

 かつては「即戦力」として球界の発展に貢献してきた社会人出身の投手たち。今年のドラフトで指名された23人という人数は、ここ5年間で最多であると同時に、まだまだ成長を期待できる選手が多いという。オリックスに指名された吉田一将(JR東日本)を筆頭に、彼ら自身の手によって、失われつつある「即戦力=社会人」の地位を取り戻せるのか、注目したい。

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