かつて「即戦力」と呼ばれた社会人投手の復権はあるのか?

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • 日刊スポーツ●写真 photo by Nikkan sports

 先日、プロ野球の新人王が発表され、セ・リーグは16勝4敗の小川泰弘(創価大→ヤクルト)、パ・リーグは15勝8敗の則本昂大(三重中京大→楽天)が選ばれた。これで大卒投手の新人王受賞は、セ・リーグが3年連続、パ・リーグが2年連続となった。また今季は小川、則本の他にも、菅野智之(東海大→巨人)が13勝6敗、三嶋一輝(法政大→横浜DeNA)が6勝9敗など、大卒1年目の投手が期待通り「即戦力」としての活躍を見せた。

オリックスからドラフト1位で指名されたJR東日本の吉田一将。オリックスからドラフト1位で指名されたJR東日本の吉田一将。

 一方、同じく即戦力として期待されている社会人投手はどうか。松永昂大(大阪ガス→ロッテ)は主にセットアッパーとして58試合に登板し4勝1敗1S、増田達至(NTT西日本→西武)も中継ぎで42試合に登板し5勝3敗と存在感を示したが、大卒投手ほどのインパクトを与えられなかったことも事実である。

 先述したように、大卒1年目投手の活躍が目立っているが、ここ5年間で社会人出身の投手が新人王を獲得したのは、2009年の攝津正(JR東日本東北→ソフトバンク)、2011年の牧田和久(日本通運→西武)のふたり。ちなみに、セ・リーグにいたっては1994年の藪恵壹(朝日生命→阪神)を最後に社会人投手の新人王は出ていない。80年代から90年代半ばにかけて野茂英雄(新日鉄堺→近鉄)や与田剛(NTT東京→中日)、潮崎哲也(松下電器→西武)、伊藤智仁(三菱自動車工業京都→ヤクルト)など、多くの社会人投手が衝撃的な活躍を見せていたが、それも次第に減っていった。

 そのひとつの要因に挙げられるのが、社会人チームの減少だ。20年前に約150あったチーム数は、現在89にまで減っている。こうしたチーム数減少は、人材確保に大きな影響を与えた。昨年まで広島でスカウトを務めていた宮本洋二郎氏は次のように語る。

「チーム数が減ると、野球を続けたくても続けられない選手が出てくる。そうなるとどうしても選手層は薄くなりますよね。それに2000年以降はオリンピックのプロ化が進み、現在は野球自体がオリンピック競技から外れました。何がなんでも社会人でプレイして、オリンピックに出たいという選手は当然いなくなりましたよね」

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