則本昂大、小川泰弘......なぜ大卒ルーキーばかり勝てるのか (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 小川は高校時代に21世紀枠で甲子園出場の経験を持つが、大きな注目を集める投手ではなかった。それが大学では2年春から主戦となり通算36勝3敗。則本も同じく2年春からエースを務め通算27勝0敗。圧倒的な数字を残しながら全国大会でもアピールし、存在価値を高め続けていった。また、益田など高校時代は主にショートの控え(故障もあり野手に専念)でありながら、大学で投手に“復帰”すると、特に4年時に大きな活躍を見せ、まさに人生が変わった。
 
「日本では甲子園の注目が大きい分、高校3年時の評価がそのままその選手の評価になるようなところがある。でも、体の面から見れば成長が止まってからしっかりトレーニングを積めば、そこから体が変わり、パフォーマンスが一気に上がるケースはいくらでもある。投手なら筋肉がついて球速が大きくアップして、それまでと別人のようなボールを投げるようになったりね。大学の4年間というのは体が大きく代わる時期であり、その結果、高校まで目立たなかった選手が一躍、スカウトの注目を集めるようにもなるわけです」

 そう話すのはプロの選手も多数指導するあるトレーナーだが、一昨年のセ・リーグ新人王、澤村などは大学時代に体が変わり、プレイが変わった典型だろう。大学で本格的なウエイトトレーニングを取り入れ、肉体改善の結果、入学時は141キロだった球速も157キロにまでアップした。成長期が終るひとつの目安は「身長が止まった時」で、20歳前後まで身長が伸びる選手もおり、そこから本格トレーニングで“化ける”可能性を秘めているということだ。ダルビッシュや田中将大、前田健太らを見ても、プロ入り後の成長にははっきり体の変化が重なっているが、この体が大きく変わる時期が、大学の4年間に重なることが多いということだ。そう考えれば、高校時代まで無名だった選手が大学で大きく伸びるケースもある意味では必然なのだろう。永山氏は「そこも含めて……」と最後にこう語った。

「大きく伸びるためにはその選手にとって“はまる”チームへ進むこと。益田や小川、則本らにとっては、選んだ大学が様々な意味ではまったのでしょう。そして、これはプロの世界でも言えることで、今の3人はロッテ、ヤクルト、楽天というチームにはまった。チャンスをある程度もらえ、存分に力を発揮できる場所があったから大きな結果を残すこともできたということでしょう」

 大学ではまり、プロでもはまった。見事にこのふたつを渡り歩いた選手に、大きな成長と結果が待っていた。今年も育成枠を含めると89人の選手がプロからの指名を受けたが、1年後、今以上の注目を浴び、笑顔を浮かべているのはどの選手だろう。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る