則本昂大、小川泰弘......なぜ大卒ルーキーばかり勝てるのか

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 近年、地方大学が全国大会を制すことも珍しくなくなってきているように、大学野球における地域差は確実に詰まってきた。各大学が設備の充実、指導者や選手の確保といったハード面の強化に力を注ぐ裏には、不景気のなか、生き残りをかけた大学側の思惑がある。それに加え、ひと昔前であれば大学と同じく、高校生の受け皿となっていた社会人野球のチーム数減少という事情もある。そういった前提を踏まえ「プロのスカウトが隅々まで足を運ぶようになったことも、地方の選手が正当に評価されるようになったひとつでしょう」と話してくれたのはソフトバンクの永山勝スカウト部長だ。

「10数年前であれば、プロに行くならこの大学、という見方がプロ側にも選手側にもあった。東京六大学や東都、関西の強豪......。それ以外なら九州共立大や東北福祉大がドラフト上位の選手を輩出する大学という見方ですね。だからスカウトもその大学へ通うことが多かった。でも、今は選手そのものを探し、見に行くようになり、スカウトも日本の隅々まで何度も足を運びます。これは野手ですが、昨年のドラフトで巨人が2位で道都大の大累進選手を指名しましたが、そういう時代になってきたということです」

 選手としても「しっかりやっていれば誰かが見てくれる」というモチベーションを持ちやすくなったことだろう。さらに永山氏は、いわゆる強豪チームでないからこその良さもあると続けた。

「すべてではありませんが、名の通ったチームは選手自体が多く、出番が限られやすい。チャンスをもらっても1度、2度ものにできないと次がなかなか回ってこなかったり、場合によっては次がないかもしれない。本当の力を持った選手なら、そういう中からも出てきますが、そこまで達してない選手は埋もれてしまう。それが、選手層がそう厚くないチームなら、打たれても使ってもらえ、その中で経験を積み、結果も残せるようになってくる。高校時代までそれほど大きな結果を残してこなかった選手はここで大きな自信を持てる。則本や小川あたりも絶対的エースとしてチームを任されるようになり、野球の技術だけでなく、人間的にも成長し、より大きな成長につながったのでしょう。そういったことも含め、選手にとって大事なのは、様々な意味で、自分に合う、はまるチームへ進むかどうかだと思います」

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