保留者ゼロ。なぜ中日の選手たちは「大幅減俸」を受け入れたのか (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Nikkan sports

 結局、選手の同意が必要とされる減超提示を受けたのは、6000万円から4000万円と33パーセント減を提示された山本昌、4200万円から2000万円まで52パーセント下げられた山内壮馬、2800万円から1500万円へと46パーセントダウンを提示された岩田慎司、4500万円から1800万円の提示を受けた朝倉健太の4人。

 彼らは、揃って同意した。

 そこに多くの人が違和感を覚えているように思う。

 というのも、選手の同意と言っても、たとえば今回のドラゴンズのように、目の前にデンと構える落合GMに「この額でどうだ」と同意を求められたら、暗に(イヤなら辞めてもらって構わないんだぞ)と脅されているに等しく、そんなもの、頷(うなず)かないわけにはいかないじゃないか、と感じるからだ。実際、減超提示だけでなく、減額制限いっぱいのダウン提示が相次いだのにもかかわらず、保留者はゼロ。1億円を超える荒木雅博、吉見一起はそれぞれ、1億7000万円から1億200万円、2億9000万円から1億7400万円と、減額制限いっぱいの40パーセントダウンを提示されたのに一発サイン。さらに、ベテランの和田一浩は8000万円減の2億5000万円、一昨年のMVP、浅尾拓也も5500万円減の1億6500万円、6月にノーヒットノーランを達成した山井大介が2000万円減の6000万円でサイン。.310から.248へと打率を大幅に落とし、盗塁も32から19へ減らした大島洋平には、規定打席に達したレギュラーでありながら減額制限いっぱいの25パーセントダウン(7500万円から5625万円)を提示されながら、大島自身、「マックスで行かれると覚悟してました」とコメントしている。ルーキーも例外ではなく、慣例では2年目は現状維持、ダウン提示だったとしても10パーセント程度とされてきた1年目の選手たちにも、軒並み減額制限いっぱいの25パーセントダウンを提示。昨秋、ドラフト1位で指名されて慶大から入団した福谷浩司も、1500万円から1125万円まで下げられるなど、じつに18人が減額制限いっぱいのダウンでの更改となったのである。

 選手の同意があれば認められる減額制限なんて、いったい何のために存在しているのか。

 そもそも野球協約が矛盾しているのだ。「一定割合以上、減額されることはない、ただし選手の同意があればOK」というのは、「選手の同意がなければ一定割 合以上、減額されない」という文言と同意のはずなのに、現実はそうではない。「一定割合以上、減額されることはない、ただし選手の同意がなければ自由契約 (クビ)、文句があるなら調停(訴えろ)」という文言と同意になってしまっているのである。

 そんなの、おかしいじゃないか、と誰でも感じる。

 しかし選手会は目くじらを立てない。野球協約もそのままだ。いったい、なぜなのか。

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