2013.12.02

保留者ゼロ。なぜ中日の選手たちは「大幅減俸」を受け入れたのか

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Nikkan sports

 チームも低迷、観客動員も減少しながら、選手の平均年齢と年俸は上がる一方――そんな中、落合GMがチーム再建に向けて、まず浴びせかけた強い向かい風が、今シーズン、打率.236と極端な不振に陥った、38歳の井端弘和に下交渉で提示した9割近い大減俸だ。

 監督だった頃、落合GMが井端にとりわけ目を掛けていたことはよく知られている。同時に、落合前監督に命じられたショートからセカンドへのコンバートが井端の本意ではなかったとの話も耳にしたことがあるが、この春、WBCで日本中のヒーローとなり、ベストナイン5回、ゴールデングラブを7回も獲得したドラゴンズの顔に対するあまりに酷な通告は、井端にとっては屈辱以外のなにものでもなかった。落合GMは「ここ数年は故障がちで、メスも入れた選手に億以上の金を出すリスクを球団が背負えるのかといえば、その状態ではない」「俺は戦力外の選手に金額提示はしない」と現状を説明したが、このオフには右足首と右ヒジの手術を受けて来シーズンに備えていた井端への88パーセントとも言われるダウン提示は、井端だけでなく、他の選手たちにも落合GMの"聖域なき査定"を印象づける恰好のプロローグとなったはずだ。

 しかも、井端はその提示を拒んだ。

 野球協約の第92条(参稼報酬の減額制限)には、年俸が1億円を超える選手は40パーセントを超えて、また1億円以下の選手は25パーセントを超えて減額されることはないと定められている。井端の2012年度の年俸は1億9000万円とも2億5000万円とも言われており、3000万円程度の提示は40パーセントをはるかに超えた減額である。しかし第92条には、選手本人が同意すれば制限を超えて減額することができるとも記されており、選手の同意を得た上での減額なら問題はない。

 井端は同意しなかったのだ。

 同意しない場合は、どうなるのか。

 日本プロ野球選手会によれば、現在はNPBと選手会との合意のもと、減額制限超過提示(減超提示)をする場合は、選手には自由契約になる権利が与えられているのだという。井端は、そのルールに基づいて自由契約を選択した。自由契約になった選手はトライアウトを受けられるよう、球団は毎年、所定の日までに減超提示を済ませなければならず、選手は第1回合同トライアウト前にいずれかを選択する必要がある。

 自由契約を選択しない場合において、調停を申し立てることも可能であり(参稼報酬調停制度)、選手の側に立てばあまり助けにはならなかった調停も、2009年の野球協約改正によって球団、選手の言い分を聞いて裁定を下す年俸調停委員会がコミッショナーから独立。中立な立場から裁定が下されるようにはなっている。それでも調停は、カネのことで揉めたという印象を周囲に残すことは否めず、選手にとっては必ずしも得策でない場合が多い。