小池正晃「横浜愛と神様が打たせてくれたホームラン」 (4ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi
  • photo by(C)YOKOHAMA DeNA BAYSTARS

 小池は引退の意思を固めると、アメリカにいる松坂にも電話で報告した。

「最初は意外だったみたいで驚いていましたけど、(松坂)大輔も取り繕うようなことは言わなかった。『オマエが決めたことだから何も言わない。ただオレは、オマエの分までやらなきゃ。1年でも長く、オレはやるよ』と。他の高校時代の連中もそんな感じでしたね。『もったいない』という言葉はほとんどなく、逆に『15年間もよくやったな』って言ってくれました。本当ですよね。ドラフト6位で入団して、ここまで長くやれるなんて、達成感じゃないけど、僕自身の中でよくやったなっていう思いはあります」

 プロ最終打席でのホームラン――小池のフォロースルーは軸が崩れまくり、まるで子どもがバットに振り回されているようだった。

「あの時は、とにかく全力で振ることしか考えていませんでした。レフトスタンドに入るボールを見ながら、いろんな思いが体の中でスッと落ちていった感じでしたね。子どもにも、親として忘れられないシーンを作ることができましたし、ホント、出来すぎな終わり方ですよ。あの引退試合でのホームランは、これまで支えてきてくれた人たちが打たせてくれたんだと思います。それとここまで15年間、最後の最後まで一度も野球を諦めなかった思いが通じたのかもしれませんね」

 小池に「野球の神様はいましたか?」と訊くと、「いましたね」と爽やかに微笑んだ。

 来季からは横浜DeNAの一軍打撃コーチに就任する。第二の人生ですべきことは、横浜への恩返し。「横浜愛」を持って、自分が在籍した時には成し遂げられなかった頂点を、選手たちとともに目指す。

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