細山田武史「もう一度、人生を賭けてみる」

  • 高森勇旗●文 text by Takamori Yuki

 ベイスターズ時代はなかなか発揮できなかった捕手・細山田としての持ち味。新たな舞台で、どう表現していくのだろうか。そして、ベイスターズに対しての思いを語ってもらった。

「見返してやろうとか、そういう気持ちはそこまでない。育てていただいたチームでもあるし、感謝の思いもある。でも、『何であの選手を出したんだろう』と思われる活躍をしたい。その気持ちは強いかな。チームが変わっても、オレのやることは同じ。技術的なことではなく、バッテリーを組んだ投手と、『心』で向き合えるキャッチャーであること。年上、年下に関係なく、心と心で向き合ってお互いに向上していく。その先にあるのはチームの勝利。いかにして勝つか、そのことだけ。ベイスターズでは、伝え方がうまくなくて失敗することも多かったから。自分自身、遠慮もあったんだと思う。でも、オレは一度死んだ身。失うものは何もない。もう一度、自分の持ち味を表現できるチャンスを頂いた。もう一度人生を賭けるチャンスを頂いた。今度こそ、自分の『心』を全部伝えていこうと思う」

 取材中、何度となく「斎藤佑樹」という言葉を口にした。そんな質問に対して、嫌な顔ひとつせずすべての質問に答えてくれた。世間で言われている、「斎藤佑樹の恋女房」としての細山田は最初からいない、と私は思った。細山田は最初から、捕手・細山田であって、これからもその姿勢は変わらないであろう。

 大学時代、優勝パレードで壇上に上がり叫んだあのセリフ。

「花は桜木、男は細山田」

 そんな男気を、新たな舞台で存分に発揮してもらうことを心から願っている。

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