斎藤佑樹の覚悟「何が待っていたとしても、それも僕の人生」 (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 日刊スポーツ●写真 photo by Nikkan sports

「腕が振れはじめたなと思った頃から、いろんなリズムで投げてみました。グローブの位置は下げた方がいいのか、上げた方がいいのかとか、右ヒザは曲げた方がいいのか、曲げるとしてもどう曲げるべきなのか……フォームを試行錯誤しているうちに、いろんなことをやり過ぎてしまったんです。だから今は、同じフォームで投げることを意識しています。そのフォームを体に覚えさせたい。その結果、腕を振ろうとしていないのに138キロが142キロになれば、腕が振れているということになる。怖いのは、スピードを求めて、腕を振ろうとして、力感を求めてしまうことです。バチーンと投げたら、力感はあるんですけど、バッターの反応もイマイチだったり、スピードガンの数字も意外に出ない。スライダーにしても、ピュッと軽く投げた方がバッターがクルンって振ってくれたり、詰まったりするんです。だから、リリースの力感を求めてはいけない。ホームランを打てたときって、手応えがない、バットが抜ける感覚があるんですけど、ああいう感じだと思います。要は、体がしっかり動いてくれれば、力感なく腕を振り抜けると思うんです。頑張ってる感を出してしまうと、ダメなんです」

 しかし、力を抜くのは思うより難しい。斎藤はこの秋、フェニックス・リーグで3試合に登板した。

 10月10日のオリックス戦は6回途中まで投げて、被安打10、失点11。
 10月17日の韓国・ハンファ戦は6回を投げて、被安打6、失点3。
 10月26日の広島戦は5回を投げて、被安打10、失点4。

 いいリズムで投げていたかと思えば、突如、乱れる。ホームランを打たれた後に連打を浴びたり、エラーやフォアボールでランナーを溜めると歯止めが利かなくなる。それは、斎藤の持ち味である駆け引きや粘り、微妙なタイミングのズレを呼び起こす段階には至っていないからだろう。

 力を入れずに投げたら、強いボールは投げられない。

 だから、つい力を入れて投げてしまう。

 でも、力が入るとフォームがブレるし、肩に負担もかかる。

「6割くらいの力の入れ具合から入って、7割、8割くらいで投げられているうちはいいんですけど、これが9割までいってから打たれると、カッとなって10割になっちゃう。力が入り過ぎちゃうんです。その瞬間、制御が効かなくなってしまう。いったん力が入ると、もう一度、力を抜いて投げられなくなるんですよ。10割から、6、7割には戻せなくなってしまうんです。そこのところも含めて、脱力はホント、難しいと改めて感じています」

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