懐かしい顔がいっぱい。トライアウト2013 (3ページ目)

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • 日刊スポーツ●写真 photo by Nikkan sports

 昨年に続き、トライアウトに参加したのは木田優夫(45歳)だ。国内外球団を転々としてきた彼は今年石川ミリオンスターズに参加。今年も60試合に登板するなど肉体も闘志も衰えず、独立リーグ日本一の胴上げ投手となった。NPB復帰への想いは人一倍強い。トライアウトでは2三振を奪い、無安打に抑えた。

「この日のために、石川で1年間、投げてきました。興味を持ってくださる球団があればいいですけど、仮になくても、どこかで野球を続けると思います」

 今年のトライアウトは、途中から雨足が強くなり、後半は室内練習場でのシート打撃がテストの場となった。守備や、ランナーに出て足をアピールしたい選手にとっては、見せ場がなく不運と言えた。

 そんな中、数少ない守備機会で存在感を示したのは、阪神で活躍した林威助(34歳)だ。小雨だった午前中には、レフトの守備についてフェンスに激突しながら好捕するシーンがあり、打っては3打数2安打の結果を残した。台湾から福岡・柳川高校に留学し、近畿大を経て阪神に入団。ミスター・タイガース掛布雅之氏の背番号「31」を背負うなど、期待された左打者だった。

「できるなら日本のプロ野球を第一に考えたい。ルール上の制約もあって、すぐには台湾のプロ野球には行けないこともあります。台湾代表にもまた戻りたいです」

 今季のプロ野球は楽天の日本一で幕を閉じた。日本シリーズに出場するようなチームはどうしても戦力外通告が遅れる。トライアウトまでわずか2週間という10月29日に、戦力外通告を受けたのが、楽天球団創設メンバーの高須洋介(37歳)である。彼はコーチ就任の要請を蹴ってまでトライアウトに参加したという報道もあったが、本人はそれを否定した。

「オファーがなければ指導者にもなれない。ないものはしょうがないじゃないですか。自分の中で納得できたらと思ってトライアウトは受けました。今後の勉強にもなりますからね。結果にはこだわっていません。声がかかれば、そこで初めて考えます」

 高須は、誰より楽天と仙台市民に対する愛着・愛情があるはずだが、日本シリーズはテレビですら見なかったという。それだけ戦力外は、本人にとっても屈辱的な通告だったのかもしれない。

「見てもしょうがないでしょ。戦力外なんだから。見返したいとかはないですよ。こういう世界なのは分かっていましたから」

 高須同様に10月29日、楽天から戦力外通告を受けた加藤大輔(33歳)は、オリックスに在籍していた2011年に続く、二度目のトライアウト参加となった。打者4人に対し被安打1、2四球の内容に終わり、悔しさ混じりに準備期間が足りなかったことを悔いた。

「今年、右ヒジのクリーニング手術を受けたんです。それを(球団が)許してくれたから、どこか自分の中で『今年は(戦力外は)ないかな』というような気持ちがあったのかもしれない。危機感を持っていたら、十分な準備ができたはず。自分が至らなかった……」

 悲哀に満ちた12球団トライアウト受験者の中から、今年は何人の再就職先が決まっていくのだろうか。第2回目は11月22日にナゴヤ球場で行なわれる。

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