懐かしい顔がいっぱい。トライアウト2013 (2ページ目)

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • 日刊スポーツ●写真 photo by Nikkan sports

 日本ハムでプレイしてきた糸数敬作(29歳)は、トライアウトで声がかかれば喜んで現役を続けるものの、決まらなければ潔く身をひく覚悟だ。セカンドキャリアは既に決まっている。

「実は球団に黙って、ダイビングの資格を取っていたんです。ダルビッシュ(有)や大谷(翔平)ら、すごいピッチャーを見てきて、自分の力は理解しているつもりです。今後は1年間、知り合いのダイビングショップで月10万円ぐらいの給料で修行して、1年後に地元の沖縄でダイビングショップを開こうと思っています。もし野球ができるチャンスがあれば、ダイビングショップの夢を遅らせるまでです」

 懐かしい顔もあった。ロッテで活躍し、2011年に阪神にFA移籍した小林宏之(35歳)である。今年は米国ロサンゼルス・エンゼルスのスプリングキャンプに参加したものの、シーズンを前に解雇の憂き目に。その後はBCリーグの群馬ダイヤモンドペガサスに入団、先発投手として活躍した。小林は阪神のビジター用のユニフォームを着て、トライアウトに参加していた。

「引退は一瞬だけ考えたことがあります。(阪神在籍2年目の)去年、自分でも投げていて、フォームがよくわからなくなって......。それまではフォームのチェックポイントがいくつかあって、そこを修正したらうまくいっていたんですけど、うまくいかなくなってしまって。ブルペンでも思ったように投げられなくなってしまったんです。それでいろんなことを気にしだしてさらにバランスが崩れた。悩んで、自分の感覚を失ったまま退団することになったんです。でも、アメリカに挑戦し、独立リーグで投げている時は昔の感覚を思い出して、徐々に状態が上がってきた。NPBでやれるチャンスがあるならと思って、トライアウトにも参加しました」

 とりわけ、ロッテ、阪神時代の小林は無口でクールな印象があり、プライドを投げ捨ててまで現役に執着するようなタイプには思えなかった。

「そういう風に見られがちなんですけど、けっこう、熱い男っすよ(笑)。独立リーグでは楽しく野球ができました。阪神時代は自分との勝負だった。自分のフォームはこれじゃない、あれじゃないと。バッターと勝負できていなかったんです。痛いところもないし、状態は上がっている。まだまだやれると思います。甘くない世界とはわかっていますけど、どこか声をかけてくだされば......」

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